体験談

コロナ禍のスペインで留学を継続して良かった事

2021年2月12日

マスクをする女子学生

この記事では、コロナ禍のスペインで留学を続けた日本人の体験談を紹介します。

まずはじめに、当時のスペインの状況を簡単に振り返ります。

感染拡大から警戒事態へ


  • 3月初め

    スペイン全土の感染者数累計が、100名台から日を追うごとに増加傾向へ


  • 3月9日

    感染者累計が999名と急速に拡大すと、日本の外務省は、スペインに感染症危険情報(レベル1)を発出


  • 3月10日

    ラ・リオハ州がハイレベル感染地域に指定


  • 3月12日

    日本の外務省は、マドリード州、バスク州及びラ・リオハ州の感染症危険情報をレベル2に引き上げ。(その他の州は、レベル1で継続)


  • 3月13日

    スペインの首相が会見を行い、翌日14日の臨時閣議で「警戒事態」を宣言する政令を発出すると発表。



学生の留学地であるガリシア州では、中央政府の警戒事態宣言の前に学校の一斉休校を決定。

大学へ通うことが出来なくなった当時の状況から聞いてみました。

日本帰国かスペイン残留か

3月13日に放送されたスペイン首相の会見を聞いて、判断の早い友達は帰国を即決断。

警戒事態宣言の政令が発出した次の週から、現地で知り合った留学生が次々と日本へ帰っていきました。

もうすぐ国境が閉まるから、早く帰った方がいいよ!
そんなことない、すぐに良くなるよ。

と意地になっていましたが、奨学金の支払いもストップしてしまい、帰国について何度も考えました。

当時、マドリード空港で多くの便がキャンセルされ、チケットを買い直した友達もいました。

そんな状況で、感染者数が少ないガリシアからマドリードへ行くのが怖くて、なかなか決断できませんでした。

そんな時…

携帯電話とパソコン

大丈夫?

と、いつこさんから連絡をもらいました。

話をしながら自分の意見が少しまとまってきた気がして、自分はどうしたいのかもう一度考えてみることにしました。

またスペインへ戻ればいい

日本へ帰りたくない気持ちを一旦置いて考え直した時、もう二度とスペインに来れない訳ではないと気づきました。

無理して残らずに、日本へ帰ってバイトして、カミーノを歩くために再びサンティアゴへ戻ろうと思いました。

しかし、出国は難航

友達からマドリード空港は約3分の1に人数が減っていると聞き、若干リスクは低下してるかなと思いつつも…

チケットの手配にてこずっている間に、イベリア航空の21日最終便もキャンセルに。

この時点で、腹をくくれた気がしました。

やれるだけのことをやって出れないなら、今動くなということ。流れに乗りなさい。

と、オトラさんに言われて気持ちが軽くなりました。

スペインの危険感染情報がレベル3へ

ビザの問題はないし、家主に助けられているから大丈夫と親に説明した数日後のことでした。

スペインの危険感染情報がレベル3へ上がり、日本の大学からの命令で帰国せざるを得ない状況になりました。

今は動く方が危ないのに…どうしたらいいのかまた分からなくなりました。

大学への連絡で一番自分が強く伝えた事

留学前に署名した誓約書には、大学から帰国勧告があった際には従うと書かれていました。

大学の指示通り、日本へ帰らなくてはいけないのは分かっていましたが…

動くことが自分と周りへの感染リスクを高めるので、状況が落ち着いた頃に帰国させてほしいと伝えました。

すると、大学から届いた最終方針の中で…

現時点での帰国が学生の健康や安全の確保にとって有効ではない場合、学生と国際交流室と相談の上、適切な帰国の時期を決めるようにする。

と、帰国が難しい学生への対応部分が新たに追加されていました。

同じ頃、文部科学相が帰国が難しい日本人留学生への奨学金支援継続を決定!

他の留学生と一緒に出した要望が届いたと知って、本当に嬉しかったです。

学校の命令や生活の中のルールには絶対従うべき、リスクが伴っても帰国しかないと思っていましたが…

正当だと思う理由があるなら声を上げたり、理解してもらおうと主張することは悪いことではないと学びました。

留学の最後で大切な経験ができたし、この経験は、今後踏み出そうか悩んだ時に自分の背中を押してくれるだろうと思います。

外出規制期間はどう過ごしていた?

留学中の食事

帰国を迷っていた時期は、友達や家族とよく連絡を取っていましたが、その後で1日の主な活動内容がご飯食べることくらいしかない日もありました。

ニュースでコロナの悲惨な状況を知り、何もできなくて落ち込んでいると…

涙が出てきたら太陽を浴びなさい。絵が好きなら絵を描きない。

とマリアに言われ、ひたすら絵を描いていたら、次第に気持ちが落ち着きました。

コロナが収まるのを待つと決めてから、今までやりたいなと思いつつ出来ていなかったことを思いつくままにやりました。

つまみ細工のイヤリング作り

つまみ細工のイヤリング

日本の百均で買った伝統工芸「つまみ細工」の手作りキット。

自粛生活中に作ってマリアにプレゼントしたら、とても喜んでくれました。

イヤリングを付けたマリア

簡単に出来るので、ホームステイ先や知り合ったスペイン人へのプレゼントにおすすめです。

家主と閉じこもり生活を楽しむ

  • マリアに絵を教えてもらう
  • フラメンコの衣装を着て、ダンサーになりきってみる
  • ファンキーな髪型をしてマリアと一緒に写真を撮る
  • マリアと歌舞伎のパックをする

と、閉じこもり生活を少しでも楽しくするように心がけました。

外出規制期間で大学の授業はどうなった?

  • オンライン授業
  • YouTubeでの授業配信
  • 音声付きのパワーポイント

と、科目によって対応は様々でしたが、オンライン授業を受けていました。

評価方法もテストからレポート提出へ変更し、グループでのレポート課題は、ワッツアップで他の学生と連絡しながら進めました。

外出規制期間の方がスペイン語を話す機会が増えた

マリアが作るごはん

閉じこもり生活中、マリアと毎日交代でお昼ご飯を作って料理を教え合いました。

食後にゆっくりコーヒーを飲みながら、日本とスペインの文化の違いについてよく話をしました。

インテルカンビオ(スペイン語と日本語の交換授業)の相手もコロナで仕事が出来なくなり、スカイプで頻繁に授業をするようになりました。

外出できなくなったのに、前よりもスペイン語を話す機会が増え、日本についてもよく調べるようになりました。

コロナ禍のスペインに残って良かった?

他の学生の事を考えると、私だけ残れてしまったことに対して申し訳なさや罪悪感はありました。

しかし、自粛期間中の生活がなかったら学べなかったことがたくさんあったので、スペインに残って良かったです。

自立してエネルギー溢れるスペイン人女性(マリア)の考え方や生き方に触れる事ができていい影響を受けました。

留学前と今の自分を比べて

日本にいた時の自分は、とにかく失敗しちゃいけない気持ちが強かったのですが、

今は失敗してもその経験がその後の話のネタになるから失敗したっていいんだと思えるようになりました。

日本では、人と接する時に向こうから声をかけられたら嬉しいのに、自分から声をかけたら相手に迷惑かも、と理由をつけて自分から声をかけるのが苦手でした。

でも、スペインでは自分から声をかけなければ何も始まらない。

怖くない、とりあえず声をかけてみようと行動に移した事で、少しずつ何でもとりあえずやってみようと考えるようになりました。

2020年6月に帰国

外出規制が緩和され、現地でお世話になった人たちに直接会ってお別れして日本へ帰りました。

空港で検温・PCR検査・唾液採取検査をした後、ホテルで14日間の隔離生活を送りました。

映画鑑賞、就活の準備、留学中に知り合った友達とスカイプでおしゃべり等して過ごしました。

今は、バイトと就活を頑張る日々を送っています♪

おわりに

2020年3月、帰国か残留かで決断できない彼女と話をした時、『自分の留学をどうしたい?もう一度考えてごらん。』と言いました。

サンティアゴで彼女に初めて会った時、

自分は年上の人、特に母親の言う事は絶対に従う部分があったので、スペインでは自分主体にやってみたいと思いました。

と話してくれたのを覚えていたからです。

あの時、警戒事態宣言を受けて帰国を即決した学生の決断が一番正しかったのかもしれませんが…

事態が二転三転する中で自分で考えて行動し、日本の大学等へ自分の意思を伝える過程を追いながら、彼女はとても貴重な経験をしていると思いました。

年が変わっても状況は改善するどころか悪化しているとさえ感じます。

留学できずにいる学生の気持ちを考えると、複雑な気持ちになりますが、スペイン留学を考えている学生に本文がいい刺激になれば嬉しいです。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

旅の計画にご活用下さい。

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いつこ

日本人で唯一のガリシア州公認観光ガイド。サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学で観光マネージメント修士課程修了。同大学で留学生サポート業務を約4年経験。2019年にサンティアゴ巡礼専門の旅行会社に就職。まだ認知度が低いサンティアゴやガリシアの魅力を伝えるのが私のミッション。

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