この記事は、2020年コロナ禍のスペインでサンティアゴ巡礼路を歩いた時の私の体験記です。
本文のポイント
- 2020年3月の警戒事態宣言前から1年を通して私が歩いたカミーノの様子
- 巡礼路を歩きながら考えたこと
- 巡礼中に出会った巡礼者の声や地元の人を見て感じたこと
とりとめのない話になりますが、2020年のカミーノについて知りたいと思った方は、少しの間お付き合い下さいね。
2020年3月の警戒事態宣言前からカミーノを歩くまで
3月上旬のある日、在宅勤務中の私に、仕事の仲間からこんなメールが届きました。
すぐ返信できなくてごめん。(カミーノの)予約キャンセルが相次いで対応に追われているの。本当にカオス状態よ。
少し前に、今年の春に巡礼を予定しているお客様から日程変更の依頼が増えていると聞いていましたが、恐れていたことが現実となりました。
3月14日、警戒事態宣言が発効。
私は一時解雇を受け、約3か月の閉じこもり生活を送りました。
警戒事態解除後の7月、週末にムシアまでのカミーノを自転車で走った夫がこう言いました。
この言葉に背中を押され、今年1月に途中まで歩いたフィステーラへの道を完歩しました。
その後も、平日の朝や週末を利用しながら、下記のルートと区間を歩きました。
- フィステーラからムシアへの道
- ポルトガルの道(カルダス・デ・レイスからサンティアゴ)
- プリミティボの道(ルーゴからメリデ)
- フランス人の道(オ・セブレイロからパラス・デ・レイ)
歴史的にも聖年を含めその前後の年は忙しいと聞いていたので、まさか2020年にこれだけカミーノを歩けるとは思いませんでした。
とは言え、コロナと共存の巡礼で私も不安な点がありました。歩く前と実際に体験して思ったことを次で紹介します。
コロナと共存のカミーノで不安だったこと
バス移動
密室空間の中、他の人と何時間も移動することに抵抗がありました。
サンティアゴからガリシア州内別のポイントへの移動で、片道3時間はかかります。
車内でマスク着用は絶対ですが、1.5mの身体的距離を取るのはなかなか難しいです。
あるバス会社のサイトで感染予防対策は万全とあっても、乗車すると席番号は無視でほぼ満席状態。
居心地が悪かったこともありました。
1度、バスが走りだしても座席のスクリーンが映らないと、前後左右の席に移動しまくり、周りの乗客に近距離で話しかける女性がいました。
通常なら気にならない光景でも、その時は『おばちゃん、黙って座ってて』と、内心神経質になっている自分に複雑な気持ちになりました。
宿泊
やはり、今年のカミーノで1番気を使ったのは宿です。
アルベルゲのドミトリーやシャワーのシェアは無理だ、と料金は高くなっても個室利用を決めました。
フィステーラの道にあるセエとフィステーラにあるホテルで1泊50€の個室に泊まりました。
コロナ後初のホテル泊、どういう対応なのか気になりましたが…
- レセプションには透明ボード
- 従業員はマスク着用
- 地図を希望した場合は、消毒ジェルを付けてから地図を取る。
- ルーム・キーやボールペンを消毒用のケースに保管。
- 観光情報をWhatsup経由で送信。
と、感染予防対策がきちんとされていて非常に好感が持てました。
個室に入ってマスクを取った瞬間の解放感、バスタブも使えて個室にしてよかったと思いました。
コルクビオンの観光オフィスでも、ドアの外に市内の観光情報をダウンロードできるQRコードも設置されていました。
フィステーラの道の歩き方について知りたいなら
アルベルゲでの宿泊は安全?
(フィステーラの道にあるアルベルゲで見せてもらった6人部屋の様子)
今年は個室を重視したので、アルベルゲのドミトリーは利用しませんでしたが…
フィステーラの道沿いにある私営アルベルゲで、6人用の共有部屋を見せてもらいました。
感染予防対策で定員の50%に制限するため、2段ベッドは1人使用になっていると説明を受けました。
後から、フランス人の道を歩いて私営アルベルゲのドミトリーを利用した同僚からも、2段ベッドは1人使用、シャワー利用時も1人だったと聞きました。
2020年の巡礼ではアルベルゲで特に問題はなかったし、逆に広々と使えてラッキーだったという巡礼者の声すらありました。
私が利用した範囲での印象は、アルベルゲからホテルまできちんと対策が取られています。
アルベルゲは安全じゃないとは思いません。しかし、感染予防対策のコストが理由かと思いますが例年より料金を上げた場所もあったようです。
一方、2020年10月にフランス人の道を歩く前、サリアのホテルやペンシオンが料金を下げていると聞きました。
2人部屋利用で1人当たりの料金を見ると、私営アルベルゲのドミトリー料金より大きく変わらない場所もありました。
正直、このケースは2021年以降の参考にならないと思いますが、自分が安心するオプションを選ぶしかない思います。
2020年にカミーノを歩いて見たこと感じたこと
カミーノは別空間
カミーノを歩いていると、コロナウイルスでざわつく日常生活とは全く別の世界にいるような感覚を覚えました。
フランス人の道で、男性の巡礼者からこんな話を聞きました。
当時、スペインの中で封鎖していない数少ない州のひとつがガリシアでした。
状況が変動する中、情報も混乱し、巡礼者も適応するのに大変だなと聞いていたのですが…
私はびっくりしましたが、彼はカミーノ中のハプニングも楽しんでいるぐらいの様子でした。
フランス人の道を歩いている最中にサンティアゴが封鎖され、スペイン人の男性巡礼者にサンティアゴに入れないねと言ったら…
という返事で、とにかく私が会った巡礼者はみんなマイペースに進んでいました。
後は、1人で歩いている女性巡礼者が思ったよりも多かったのが印象に残りました。
標識のありがたさ
フィステーラからムシアへ向う途中、一匹のシカが私の存在に気付かず、だいぶ距離が近くなってから慌てて私の目の前から逃げていきました。
シカも警戒心を下げるくらい、今年は人の通りが少ないんだろうと勝手に解釈しましたが、とにかくひとりで延々とカミーノを歩きました。
前後を確認しても誰もいない山や森の道を歩きながら、こんな場所でよく1人で歩いているなと我に返る瞬間がありました。
でも、不思議と怖いと思わなかったのは、標識の存在があったからだと思います。
30年前、まだカミーノが今のようなブームになる前、夏でもカミーノはこのぐらい人が少なかったはず。
標識は完備しているのに、巡礼者のいない道を歩きながらふとそんなことを考えました。
コロナで巡礼路沿いの宿やバルにも影響が
コロナで最も大きな打撃を受けた観光業。
混雑をさけ、自然との触れ合いを求める人の間で、夏にカミーノの需要が増えるのではと思いましたが、8月を除いて期待以上の伸びはなかったようです。
フランス人の道の次に人気の高いポルトガル人の道沿いでも『2021年にお会いしましょう!』という張り紙をつけた場所がいくつかありました。
あのサリアでも、1日店の前のテーブルに座って客を待つバルのオーナーがいたりと、状況の厳しさを感じる瞬間がありました。
しかし、コロナウイルスは存在しないと陰謀論を語り始めるアルベルゲのオーナーには、さすがに反応に困りました(笑)
3月からずっと閉まっているアルベルゲなど、聖年に営業を再開できるのか気になるところです。
巡礼とマスク
山や森の中の道を1人で歩く時、さすがにマスクは外したまま歩きましたが、小さい村や家が数軒ある道を通る時は必ずマスクをしました。
道沿いの住民に対する気遣いは大切ですが、正直、歩きながら頻繁にマスクをつけたり外したりするのは面倒でした。
マスクをしないでカミーノを歩ける日が来てほしいなと思いますが、2021年もまだまだマスクは巡礼の大事な友となりそうです。
さいごに: 2021年3月のサンティアゴから
ガリシア州の情報になりますが、2021年3月に入って少し状況が落ち着いてきました。
規制措置は場所によって変わったり、その時の状況でコロコロ変わるので詳しい説明は省きますが…
3月8日から定員が限られますが飲食店は店内でのサービスを開始したり、サンティアゴ市内から移動できる場所の範囲がぐんと広がりました。
2020年10月末に中断していたフランス人の道の残りが歩けるかも…とひそかに思っています。(笑)
実現できそうになったら、SNSでお知らせしますので、興味のある人はフォローしてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。