「画家の中の画家」と呼ばれたベラスケス。
彼の作品の3分の2を所有するのが、マドリードのプラド美術館です。
この記事では、最高傑作『ラス・メニーナス(女官たち)』に隠された謎と、あまり知られていない「ガリシア」との意外な繋がりについて、現地ガイドの視点で分かりやすく解説します。
本文を読めば、美術館で本物の絵の前に立った時の感動が、より深いものになりますよ。
時代を先駆けた宮廷画家・ベラスケス
ベラスケスは1599年、セビリアに生まれました。弱冠24歳でマドリードへ移り、国王フェリペ4世の宮廷画家となります。
彼の画風を決定づけたのは、イタリア旅行での経験でした。
ミケランジェロらの名作に触れ、光の捉え方や空気感の表現を学びます。
当時の画家は、注文主が望む宗教画や肖像画を描くのが常識でしたが、ベラスケスは目の前の風景そのものを描くなど、常に新しい表現に挑戦し続けた芸術家でした。
『ラス・メニーナス』3つの謎
プラド美術館の12号室。常に人だかりが絶えないこの巨作には、見る人を惹きつけてやまない「謎」が仕掛けられています。
① 謎:誰が「本当の主役」なのか?
中央で光を浴びるマルガリータ王女は、間違いなく主役の風格です。しかし、視点を移すと、背後の鏡に映る国王夫妻や、巨大なキャンバスに向かうベラスケス自身もまた、強い存在感を放っています。「誰が主役か」によって絵の意味が変わる仕掛けは、400年経った今も人々を魅了しています。
② 謎:画家の胸に輝く「サンティアゴ騎士団」の十字章

ベラスケス自身の胸元にある赤い十字。これは名誉ある「サンティアゴ騎士団」の紋章です。
この騎士団は中世スペインで、聖地を目指す巡礼者の保護を使命として誕生しました。
実は、この絵が完成したのは1656年ですが、彼が騎士団に加入したのはその3年後。つまり、この十字は「後から描き加えられた」となるはずですが‥‥。
ベラスケス自らが執念で描いたのか、あるいは国王が彼の死後に描き込ませたのか……今も議論が分かれるミステリーです。
③ 謎:「鏡」が映し出す空間のトリック
背景の鏡には、国王夫妻が映っています。
美術史家たちの間でも長年議論されている大きな謎が、まさにこの鏡です。
夫妻は本来「絵の外側(鑑賞者の位置)」に立っているはずですが、鏡があることで、絵の中と私たちのいる現実の世界が一つに繋がって見えます。この「空間を操る魔術」こそが、本作最大の魅力だと言われています。
「メニーナス」の意味とガリシアの女官
タイトルの「メニーナス」という言葉。実は、私の住むガリシアとも深い繋がりがあります。
語源はポルトガル語
「メニーナ(Menina)」は、もともとポルトガル語で「子供」を意味する言葉です。
当時の王宮では、王妃や王女の身の回りをお世話する、貴族出身の少女たちのことをこう呼んでいました。
ガリシアの名門貴族、マリア・アグスティナ
王女の左側で、赤い小さな陶器(ブカロ)を差し出している少女。
彼女の名前は、マリア・アグスティナ・サルミエント・デ・ソトマイヨールといいます。
彼女は、ガリシア州ポンテベドラ県のポンテアレアス(Ponteareas)にルーツを持つ名門貴族の娘です。
彼女の父は、中世の面影を残す「ソブロソ城」の侯爵位も引き継いでいました。今も地元ポンテアレアスでは、彼女をモデルにしたチャリティプロジェクトが行われています。
【2026年最新】プラド美術館の歩き方

現在のプラド美術館を快適に楽しむための必須情報をまとめました。
- チケットは完全予約制を推奨:2026年現在、当日券は非常に混み合います。公式サイトで日時指定予約を済ませておきましょう。
- 最寄り駅の名称に注意:最寄り駅:地下鉄1番線 Estación del Arte(エスタシオン・デル・アルテ駅)美術館の目の前に位置する駅です。隣には大きな列車が発着する「アトーチャ(Atocha)駅」がありますが、プラド美術館へ行くにはこの「エスタシオン・デル・アルテ駅」で降りるのが一番近くて便利です。
- 無料入場時間:月〜土の18:00〜20:00(日・祝は17:00〜19:00)。大行列が予想されるため、ゆっくり見たい方は午前中の有料時間帯がベストです。
マドリード観光をスマートに!
美術館同士の移動やバル巡りには、地下鉄の「10回券」が欠かせません。1枚のカードを二人以上でシェアして節約する方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。
-
-
【マドリード交通ガイド】賢く節約!地下鉄10回券をシェアするコツと失敗しないチケット購入術
続きを見る
まとめ:赤い十字が息づく聖地、サンティアゴへ
ベラスケスの胸に刻まれた、あの赤い十字。その名の由来であり、聖ヤコブが眠る聖地サンティアゴ・デ・コンポステラでは、今もこの紋章が街のあちこちで旅人を迎えてくれます。
マドリードで宮廷芸術の極みに触れた後は、ぜひその先のガリシアまで足を伸ばしてみてください。聖地の石畳を歩きながら、この紋章に込められた信仰や歴史の物語を、現地ガイドとして皆様にお伝えできるのを楽しみにしています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

