ガリシアのワインを語ることは、ブドウが育つ土地の自然環境やそこに携わる人々の人柄や情熱を語ることにつながります。
単なる知識としての紹介ではなく、ガリシアで生活する私の実体験も交えながらガリシアワインについてお話したいと思います。
ガリシアの5つの原産地呼称(D.O.)
ガリシア州には5つの原産地呼称(D.O.)があり、海岸部から内陸にかけてそれぞれ異なる特徴を持っています。
| 産地名(D.O.) | 特徴 | 代表的な品種 |
| Rías Baixas (リアス・バイシャス) | 潮風を感じる爽やかな白。 | アルバリーニョ |
| Ribeiro (リベイロ) | ガリシア最古の歴史を持つ産地。 | テイシャドゥーラ |
| Ribeira Sacra (リベイラ・サクラ) | 断崖絶壁の「英雄的ブドウ栽培」。 | メンシア |
| Valdeorras (バルデオラス) | 乾燥した気候。ゴデージョ種で注目。 | ゴデージョ, メンシア |
| Monterrey (モンテレイ) | スペインで最も面積の小さいD.O.。 | ゴデージョ, メンシア |
リベイラ・サクラ:収穫の記憶と「英雄的ブドウ栽培」
私が実際にブドウ畑に立ち、収穫のお手伝いをした経験がいまだに忘れられないのが、このリベイラ・サクラです。
「英雄的ブドウ栽培(Viticultura heroica)」とは
1997年にD.O.認可を受けたリベイラ・サクラは、2011年に「英雄的ブドウ栽培」に認定されました。
これは、畑が海抜500m以上、あるいは傾斜30度以上の段々畑に位置することを指します。
機械化が極めて困難で、過酷な手作業が必要とされる場所は、ヨーロッパ全体でもわずか5%という非常に貴重な存在です。
急斜面での実体験
数年前、リベイラ・サクラの急斜面に畑を持つご家族の収穫を手伝いました。
畑に向かう車窓から見える谷の景色だけで恐怖を感じるほどの傾斜で、道も狭いため、途中で車を降りて歩いて向かわなければなりません。
目の前に広がる壮大な景色を眺めながら、川を通る船の乗客に手を振ったり、仲間と畑の横で昼食を食べたりした経験は、本当に楽しい思い出です。私はブドウを摘んで箱に入れるだけでしたが、ブドウでいっぱいになった箱を担いで下ろす作業は、想像以上に大変なものでした。
急斜面には専用のトロッコも動いていますが、あくまで人間が主体となる作業であり、常に危険を伴います。お手伝いをした翌年、収穫作業中にそのトロッコが壊れる事故が起きたそうです。幸い大きな事故にはなりませんでしたが、「小さな子供がいたら危険だから」という配慮から、それ以降は声がかからなくなってしまいました。
各産地の個性と楽しみ方
- リアス・バイシャス: 潮風の影響を受けた「海のワイン」アルバリーニョは、魚介類との相性が抜群です。
- リベイロ: 紀元前から続く歴史を持ち、かつてはヨーロッパ全土へ輸出されていたガリシア伝統の味を守っています。
- バルデオラス・モンテレイ: メンシアやゴデージョといった土着品種の復興に力を入れており、近年その品質が高く評価されています。
産地を巡るための現地ツアー
ワイン産地、特に絶壁にあるワイナリーを個人で巡るには、自家用車での移動が必須となります。しかし、運転者は試飲ができないという問題もあります。
車なしで効率よく巡るなら、夏の期間限定で運行される「ガリシア観光列車」がおすすめです。
まとめ
ワインの背景には、土地の自然環境や毎年コントロールできない天候の変化に挑む人々の情熱があります。
その一杯がどのような場所で、どのように造られているのか。
産地の物語を知ることで、ガリシアでの食体験はより豊かなものになるはずです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
