この記事は、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学で観光を勉強し、巡礼者事務所の統計情報を何度も見てきた筆者が統計データについて語るというとてもマニアックな内容です。
ですので…本文を今読まれているあなたは
- サンティアゴ巡礼にハマって統計情報まで気になる。
- 勉強や仕事などでサンティアゴ巡礼の現象について調べている。
という方かなと想像します。
そうでないけど、ちょっと知ってみたいという方でも興味をもっていただきありがとうございます。
数字を出されると説得力はありますが、そのまま信じてはいけない部分も確かにあります。
最後まで読んでいただければ嬉しいです。
巡礼事務所の統計情報は何を指す?
(資料)Manuel F. Rodríguez, Los Años Santos compostelanos del siglo XXと巡礼事務所データから筆者が作成
巡礼事務所の統計情報は、コンポステーラと呼ばれる巡礼証明書を取得した巡礼者数を表しています。
証明書の獲得には一定の条件をクリアする必要があり、『巡礼証明書を最短で獲得できる出発地点を全て紹介!移動方法は?』の記事で詳しく説明していますので合わせてお読みください。
グラフを見ていると、何年かごとにグラフが急激に伸びているのがわかります。
7月25日が日曜日に当たる聖年であり、大聖堂の聖門と呼ばれる特別な門が聖年の年にだけ開かれます。
この門をくぐり、一定の儀式を行うとキリスト教徒は贖罪を受けることができるので、多くの巡礼者や観光客が訪れます。
巡礼者数は聖年に大きく増加し、次の聖年まで記録は更新されないのがこれまでの傾向でしたが‥‥
近年の世界的なスペイン巡礼の人気により、聖年に関わらず多くの巡礼者が歩いています。
サンティアゴ巡礼の目的や動機
巡礼事務所の統計は、巡礼の目的を下記の3つに分けています。
- 宗教的な理由
- 宗教&文化
- 文化的な理由
大聖堂に属する事務所なので、上記の理由以外は興味がないというのは分かりますが…
これでは、巡礼者のリアルな声は反映されていません。
少し古い情報ですが、サンティアゴ大学が行った調査では自然を楽しむ、スポーツなどといった目的が上位に来ています。
サンティアゴ巡礼路はどんな人が歩いている?
サンティアゴ巡礼路は、老若男女、国籍、宗教を問わずすべての人に歩かれている道。
男女比で、近年女性が男性の数を上回りましたが、2020年はコロナで再び男性巡礼者の割合が高くなったりとほぼ半々です。
スペイン人と外国人巡礼者比では、聖年にスペイン人巡礼者の割合が高くなる傾向がありますが、近年のデータから年々外国人巡礼者の数が増えています。
スペイン人巡礼者の内訳
(資料)サンティアゴ巡礼事務所データから筆者が作成
国内ではマドリード、アンダルシア、カタルーニャ、バレンシア、ガリシアから歩く人が多いですが…
聖年は、ガリシア人巡礼者数が大きく増加します。
聖年にスペイン人巡礼者が増加するひとつの要因は、ガリシア人巡礼者にあるようです。
外国人巡礼者の内訳は?
外国人巡礼者ランキングの上位を占める国はドイツ、イタリア、フランス、ポルトガルなどのヨーロッパ諸国です。
宗教や地理的な近さから納得の結果ですが、2014年からイタリアが1位です。
日本でも人気のある映画「星の旅人たち」の影響で、2015年からアメリカが3位に入っています。
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ヨーロッパ圏外でアメリカの他は、カナダ・ブラジル・オーストラリアなどが挙げられます。
アジアの巡礼者は?
(資料)サンティアゴ巡礼事務所データから筆者が作成
2006年に出版された韓国人ジャーナリストのカミーノ体験本がブームの火付け役となってから、ものすごい勢いで巡礼者数が増えているのが分かります。
2015年から国別巡礼者数ランキング全体のTOP10に入っています。
大学の冬休み(1・2月)に巡礼する韓国人の若者が多く、冬は月別の統計情報で韓国人巡礼者の数が1位になります。
2013年以降から中国人が、2016年から台湾の巡礼者がかなりのスピードで増えています。
スペイン巡礼の人気ルート
- フランス人の道 186,199 (56,88%)
- ポルトガル人の道 67,822 (20,72%)
- 北の道 19,040 (5,82%)
- プリミティーボの道 15,038 (4,59%)
- イギリス人の道 14,150 (4,32%)
- ポルトガル人の海岸部の道 13,841 (4,23%)
- 銀の道 9,127 (2,79%)
- ムシアーフィニステーレ 1,131 (0,35%)
- 冬の道 703 (0,21%)
1番人気のフランス人の道ですが‥‥
- 2004~2009年の割合、ほぼ8割。
- 2010年に約7割にまで下がる。
- 2018年は6割を切る。(56.8%)
と、だんだんと巡礼者の割合が減っています。
初めてのスペイン巡礼でフランス人の道を選ぶ人はやはり多いと思いますが、
- リピーターが他のルートを歩いている。
- 昔よりも他のルートで宿泊施設などインフラが良くなっている。
ことが影響しているのかと思います。
統計に出ない人気のルート
サンティアゴの巡礼事務所は、サンティアゴを目指して歩いた巡礼者をカウントするので…
サンティアゴからムシアやフィニステーレへ歩く巡礼者の数はカウントされません。
これも実際の数を把握するのが難しいのですが、サンティアゴからフィニステーレに到着した巡礼者が獲得できるLa Fisterrana(ラ・フィステラーナ)という証明書があり、2017年に2万6000以上発行しました。(情報元: La Voz de Galicia)
フィステラーナは大聖堂と関係ありませんが、数字だけで見るとポルトガル人の道の次いで3位に入る数字です。
まとめ
- 巡礼者数は、巡礼証明書を貰った巡礼者の数。
- 国別の巡礼者数を見ると、近年は外国人巡礼者の数が増えている。
- 人気のルートはフランス人の道だが、年々他のルートを選ぶ巡礼者が増加。
- サンティアゴからムシア・フィニステーレは統計に出ないが人気のルート。
約10年前に修士論文で巡礼事務所の統計情報を分析してから定期的にチェックしています。
と感じていただければいいですが…、これらの数字はサンティアゴ巡礼の本当に表の一部を表すだけのもの。
この巡礼が持つ魅力は、実際に歩いてみないと分かりませんが…
年齢、身体能力、時間的な制限など、人によって状況は皆異なるため、巡礼の最初の1歩を踏み出すことに不安を感じる人が多いのも事実です。
現在は、ネットで調べればすでに歩かれた方の情報が沢山出てきます。
情報が不足していた頃に比べれば、大きな前進ですが…
沢山の情報の中で、どれが自分に合った巡礼に役立つ情報なのかと選択に困る方の声も聞きます。
パーソナルな旅でもあるので、あなたのための巡礼の旅を形作り実行に移すべきです。
それは必ず一生の宝物になりますよ。
あなたが今抱える不安に寄り添いながら、ご自身が主体となって巡礼の形を決めるお手伝いをしております。
興味のある方は、お問合わせからご連絡下さい。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。