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子育て・教育

【スペイン】修学旅行費は宝くじで稼ぐ?売れ残りカレンダーと親の悲鳴

サンティアゴ・デ・コンポステラの街角で修学旅行の費用を稼ぐためにグッズ販売をするスペインの小学生
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いつこ

多くの巡礼者が目指すゴール、サンティアゴ・デ・コンポステラ在住。スペインガリシア州公認ガイド。観光学修士(Master)としての知識と現地在住者ならではの視点を活かし、ガイドブックには載らない「本当のガリシア」を発信中。 年間100名以上の日本人巡礼者を聖地へご案内しています。

12月のサンティアゴ・デ・コンポステラ。 クリスマスのイルミネーションが始まり、街は一気に祝祭ムードに包まれています。

そんな華やかな季節、我が家では少し切実な話題で持ちきりです。それは、来年6月に小学校卒業を控えた長女の「修学旅行」のこと 。 日本で修学旅行といえば、親が費用を積み立てて支払うのが一般的(違っていたら訂正下さい)ですが、ここスペインでは少し事情が違います。

「旅行に行きたければ、自分たちで稼ぐ」

これが、こちらの小学校のスタイル。まさに今、クリスマスの賑わいに紛れて、子供たちの「資金稼ぎ」が始まっているのです。

スペイン流「資金調達」のシステム

スペインの小学校(特に公立)では、修学旅行の費用を少しでも安くするために、前年の秋頃から子供たち自身が資金集めの活動を行います。 我が子の学校の例ですが、以下のような活動があります。

  • 「リファ(Rifa)」の販売: 宝くじのような抽選券を売る。1枚1.5€前後
  • オリジナルカレンダー等の販売: 子供たちの描いた絵がデザインされたカレンダーやお菓子を売る。
  • 「カンティーナ」: 学校行事で行内に特設カフェを開き、飲み物や軽食を販売する。

中でも面白いのが、長男も熱心に売り歩いた「リファ(Rifa)」です。 これは単なる学校独自のクジ引きではありません。我が子の学校が売るリファは、スペイン中が熱狂する一大イベントと連動しています。

運命の日は12月22日!

当選番号が決まるのは、毎年12月22日。 そう、スペイン人が一年で最も熱くなる「クリスマス宝くじ(Lotería de Navidad)」の抽選日です。

この国民的宝くじの当選番号(1等など)の「下4桁」が、子供たちが売ったリファの番号と一致していれば大当たり!というシステムなんです。 だからこそ、買った大人たちも「子供への寄付」だけでなく、当たれば投資以上のものが返ってくるのです。

▼スペインのクリスマス宝くじの熱狂ぶりについては、こちらの記事で詳しく解説しています!

スペインのクリスマス宝くじを買い求める人の行列と宝くじを持つ人の手
【2025年版】スペインのクリスマス宝くじ「エル・ゴルド」の仕組みと賞金|旅行者も買える?

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景品は夢の「セスタ(Cesta)」

そして、見事当選した人に贈られる景品がこちら。 「セスタ・デ・ナビダ(Cesta de Navidad)」と呼ばれる、クリスマスの特大ギフトバスケットです!

修学旅行のリファで当たった人がもらえる商品
▲当選者に贈られる豪華な「セスタ」。賞品がわかるよう地元の協力店で飾らせてもらいます。

中にはイベリコ豚の生ハム(脚一本まるごと!)、ワイン、シャンパン、クリスマス菓子などが山盛りに詰め込まれています。 これをゲットできれば、最高のクリスマス・ディナーが約束されたようなもの。 だからこそ、通りすがりの人やバルのお客さんも、「よし、運試しに一枚買ってみるか!」とリファを買ってくれるのです。

稼いだ利益は旅行代金に充当され、最終的に親が支払うコストが下がる仕組みになっています。

回想:2年前、「トップセールスマン」だった長男

まずは2年前、長男がこの活動をした時のことを振り返ります。 彼は「リファ」を持って、人たちが集うバルや通りへ果敢に飛び込んでいきました 。

私が小学生だったら、断られるのが怖くて足がすくんだはず。 でも長男は違いました。「どうしても売れ残ったら買い取るよ」という私の心配をよそに、彼はクラスで1番の売り上げを記録したのです 。

家族や親戚に買ってもらう子が多い中、長男の売り上げの99%は、道やショッピングセンターで声をかけた「全くの他人」によるものでした 。

地元の人々の温かさ

「俺も昔、お前と同じ学校だったんだよ。○○先生は元気か?」 偶然声をかけた男性が、そう言って何枚も買ってくれたこともありました

もちろん、冷たくあしらわれることもあります 。でも、スペインには昔からこの習慣があるため、「自分も昔買ってもらったから、今度は自分が」という優しさの循環が根付いているなと感じます 。

ただ、長男の年は「連帯責任制(みんなで稼いで、みんなで分ける)」でした。

あれだけ必死に働いた長男も、全く売らなかった子も、恩恵は同じ。本来ならタダで行けるほど稼いだのに、結局自分たちも費用を払うことになりました(笑)。

巡礼路でも販売?光るマーケティング・センス

リファ以外にも、資金作りのために自分たちで手作りしたミサンガや小物を売ったりします。

そこで、聖地サンティアゴ・デ・コンポステラがあるガリシアならではの話をひとつ紹介します。

2025年6月、「ポルトガルの道」のラスト100km付近を歩いている時のことです。

ポルトガルの道沿いで修学旅行の資金を稼ぐために手作り人形を売る子供達
▲ポルトガルの道で出会った小さな商人たち。看板にはちゃんと英語も併記されています。

笑顔で「Hola!(こんにちは!)」と声をかけられたら、足を止めないわけにはいきません。

そして、私が彼らから購入したのが、こちらのお人形。

巡礼者の帽子をつけた小さな人形
▲購入の決め手はこの「帽子」。私のリュックにつけて、今も一緒に歩いています。

頭にちょこんと乗っている茶色のフェルト。 これ、「巡礼者の帽子」です。

2年前、息子のクラスでは写真にある色違いの紐を組んでブレスレットにしたのですが、これはただの人形ではなく、ターゲットである「巡礼者」に合わせて巡礼者の姿にして売っているあたりが、上手いなと感服。

思わず財布の紐が緩んでしまいました(笑)。

実際、この帽子があるだけで、それは単なる「モノ」から「旅の思い出」に変わると思いませんか?このお人形は、今でも私の巡礼用リュックにぶら下がっています。

現在:「売りたくない」娘と、減らないカレンダー

そして今年の秋。今度は長女の番が回ってきました 。

今年の学年はシステムが変わり、「稼いだ分は個人の取り分になる(成果主義)」ことになりました。理由は、全く売らない子もいるから。 正直、これが2年前だったらと思います。なぜなら、肝心の娘は…

「恥ずかしいから行きたくない」

兄とは正反対で、彼女は通りに立つことをあれこれ言い訳して拒否します。

特に頭が痛いのが、「子供たちの絵がデザインされたカレンダー」の存在 。

A4の壁掛けタイプと卓上タイプで10部ずつ。売れなければ最終的に親が買わないといけません。

長男の時は、月ごとに変化する可愛い動物の絵が人気となり、学校内で飛ぶように売れたのですが…娘が学校から持ってきたカレンダーは全く減りません。

「売るんだよね?」と聞いても、娘はどこ吹く風。 各5€で、残り18個…。今一番の悩みです。

知り合いのお父さんもボソッと愚痴っていたので、結局は、親もある程度動かないといけません。

路上で学ぶ「商売」と「違和感」

この活動を見ていると、単なる集金以上の意味を感じます。 知らない大人に声をかけ、趣旨を説明し、断られても笑顔で次へ行く。

コミュニケーション能力とメンタルの強さが求められます。

実は以前、クリスマスの時期にカフェで「修学旅行のために」とカレンダーを売る親子を見かけたことがありました 。 でも、子供はどう見ても6歳くらい 。違和感を覚えて断ったのですが 、帰宅した息子に聞くと「学校のマークが入っていないカレンダーを売る違反者がいて、店の人に怒られていた」とのこと

お金を集める活動だからこそ、こういう「ズル」にも遭遇します 。

おわりに:買えるもの、買えない経験

何も言わなくても次々と売り歩いてきた2年前の長男。 それに比べて、今年は動こうとしない長女…。

この対照的な二人を見ながら、今年は改めて「修学旅行の準備活動」の意味について考えさせられました。

正直、親としては出費は痛いです。しつこいですが、減らないカレンダーのことを考えると胃がキリキリします…(苦笑)。

でも、これは単なる「経費削減のための集金」ではないようにも感じたのです。

長男のように「断られることを恐れずに飛び込む」経験。 娘のように「親や親戚に頼るだけでは限界がある」と知る経験。人に頼って努力しなくても物事が進んでしまうのではなく、「自分で汗をかかなければ結果(在庫)は変わらない」という現実。

自分が彼女の立場なら同じく断られることが怖いと思うので、彼女の気持ちがわからない訳ではないのです。

しかし、優しく諭してもダメ、ガミガミ怒ってもダメという状況にイライラします。

ほんの少しでも彼女の姿勢が変わるなら、旅行代金(とカレンダーの在庫)も「彼女の将来への投資」と思える……と言いたいところですが。

この記事を書いている私の横で、現実逃避するように『ハリー・ポッター』の世界に没頭している娘を見ていると、今はただ、深いため息しか出ない私です。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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