この記事では、サンティアゴ・デ・コンポステーラにある5つ星のパラドール「オスタル・ドス・レイス・カトリコス(Hostal dos Reis Católicos)」の歴史についてお話します。
元々、巡礼者のために建てられた病院でしたが、病院建設のきっかけや巡礼者が病院でどんなサービスを受けていたか知っていますか?
孤児院を併設していた病院とガリシアの有名な詩人との関係など、パラドール・デ・サンティアゴ・デコンポステーラの興味深い歴史を画像を使用しながら紹介します。
パラドールへ泊りたくなった、宿泊は無理だけど建物を見学してみたいという方への情報もありますので是非ご覧ください。
巡礼者病院建設はいつ?
1486年、カトリック両王(フェルナンド2世とイサベル1世)はサンティアゴを訪れます。
長い巡礼を終えてもケガや病気に苦しんだり、サンティアゴで亡くなってしまう巡礼者がいることを知ります。
サン・マルティン・ピナリオ修道院前にあった巡礼者病院は、増加する巡礼者を受け入れるには不十分な状態でした。
マドリードへ戻ったカトリック両王は、巡礼者病院を建設する資金工面に動き出し、
レコンキスタ(国土回復運動)完成後に獲得した収入の一部をこの王立病院建設費用にあてると決めます。
1501年に両王の指名で建築家のエンリケ・エガス(Enrique Egas)が病院の建設を開始します。
1509年に完成した王立病院は、2つの内庭回廊(18世紀にもう2つ追加)がついた2階建ての建物で、
サンティアゴに到着する巡礼者だけでなくサンティアゴに住む貧しい人々や病人、孤児たちも受け入れの対象となりました。
当時の病院の様子は?
病院の1日は朝5時のミサから始まり、ミサを終えた5時30分に病院の門が開かれました。
建物に入る巡礼者を最初に迎えるのは、複数の言語を操るオスピタレロ(宿の世話人)です。
各巡礼者の名前と国籍を記録し、男性は向かって左側(パラドールのカフェテリアへ通じる休憩室)、女性は右側のスペース(パラドールのレセプション)にあるベッドで最大3日間寝泊まりすることが許されました。
けがや病気をしている巡礼者は医者による診断を受け、重度の病気を抱えた病人は2階のベッドに案内されました。
病人への対応はどんなものだった?
17世紀まで病人には寝まき、スリッパ、頭にかぶるたれ頭巾が提供され、ひとつのベッドを2人の病人でシェアしました。
シーツは夏は8日おき、冬は15日おきに取り替えられました。
当時、ベッドの敷布団に使用されていた藁は1年に2回新しいものに変えられました。
この王立病院では病人をケアするスタッフは病院に住み込みで働いていたので、医者であれば独身、女性の看護師は独身もしくは未亡人であることが望まれました。病院内で今でいう薬剤師も働いていました。
王立病院で洗礼を受けた有名な詩人は?
王立病院は孤児院も併設していました。
パラドールの書籍閲覧室(Salón de Lectura)の窓は、当時の赤ちゃんポストでした。
預けられた赤ちゃんは、病院内のレアル礼拝堂で洗礼を受け、今でもその洗礼盤を見ることが出来ます。
ここで洗礼を受けた人物の中に、ガリシアを代表する女性詩人ロサリア・デ・カストロ(Rosalia de Castro)がいます。
ロサリア・デ・カストロは、ガリシアの近代文芸復興期においてひときわ明るく輝いた詩人である。正しく言えば、彼女の存在はそれ以上のものである。というのは、彼女はガリシアのひとびとを自分の作品によって象徴したからである。過去において詞華集が豊かであったにもかかわらず、一度も表されたことがなかったガリシアの民族が十分に表現されたと感じているからである。
引用元: 浅香武和「ガリシアのうた CANTARES GALLEGOS」 P.123
病院の監督官の部屋はどこ?
王立直属の病院の周りを囲む大きな鎖は、そこから内部は王権の領地であることを意味し、病院運営の責任者である監督官(Administrador)も王権によって任命されました。
18世紀末に王立病院の監督官だったニコラス・デ・ネイラ・イ・パラモ(Nicolás de Neira y Páramo)が使用した部屋は、現在客室のひとつ(154号室)として利用されており、部屋内部の柱にその証拠となるメッセージが刻まれています。
レストランの前身は馬小屋で劇場!?
パラドールのレストランは、病院の厩舎だった場所ですが年の数回喜劇や旅回りの芸人によるショーが行われました。
劇に訪れる観客から得ていた入場料は病院の重要な収入源でしたが、入院している患者に迷惑かけない、監督官が信頼を置いている人物が演目の内容も事前にチェックしていたそうです。
パラドールの予約方法は?宿泊しなくても見学可能?
パラドールの内部を見学しながら建物の歴史を学んでいくうちに、やはり5つ星にランクされるだけあるなと思いました。
スペインの歴史を感じながらリッチな気分でパラドール滞在を楽しみたい方、こちらの記事を参考にして予約して下さい!
パラドールでは、建物内部の各所にて歴史を解説したスペイン語と英語のプレートを設置しています。
入場料3€(12歳以下の子供は無料)を払えば、宿泊客でなくても内部を見学できます。
まとめ
- サンティアゴのパラドールの前身はカトリック両王の命で建設された王立病院。
- 病院の1階には健康な巡礼者が2階に病気にかかった巡礼者が寝ていた。
- 王立病院には孤児院も併設されていた。
- ガリシア文学の象徴と言えるロサリア・デ・カストロは病院のレアル礼拝堂で洗礼を受けた。
- 病院の監督官が使用した部屋が客室のひとつとして宿泊可能。
- 現在パラドールのレストランがある部分では、喜劇やショーが行われた。
- 宿泊しなくても入場料を払って博物館のように内部を見学することができる。
最後まで読んで頂きありがとうございました。