大学院で勉強していた頃、クラスメートのガリシア人の女の子が、目を輝かせてこんな話をしてくれました。
私の家族は、みんなランプレアが大好きなの。毎年ランプレア(ヤツメウナギ)の時期になると、ポルトガルのレストランへ食べに行くんだ!
それ以来、春(3~4月)に市場やレストランで『入荷しました』の言葉を見るたびに気になっていたランプレア。
好き嫌いが大きく分かれる事や値段も高いので正直、私は一度もランプレアを食べたことがありませんでした。
今回、ガリシア州の公認ガイドやブロガー、旅行業界関係者を対象としたFAMトリップに参加し、ついに念願だったランプレア漁の現場を訪れることができました。
実際にランプレア漁を行う方々から直接聞いた、驚くべき生態と、彼らがこの伝統を守り続ける理由についてお伝えします。
驚異の生態:5億年を生き抜く「生きた化石」
ランプレアとは、目の横に並ぶ7つのエラ穴があたかも八つの目に見えることから、日本ではヤツメウナギと呼ばれます。
見た目はウナギっぽいのですが、口を開けた様子(閲覧注意)を見ると…

吸盤のような口とトゲのような歯を使って、川にある石や他の魚に吸い付きます。
魚に寄生し、血を吸って生きることから、「水の吸血鬼」とも表現されます。
血を吸うけど、殺すことはないんだそうです。
ランプレアを知る上で欠かせないのが、他の生物とは一線を画すその神秘的な生態です。
ランプレアの一生
始まりの5年間
川で生まれた後、最初の5年間は砂や泥の中で過ごします。この時期は目も口も胃袋もなく、皮膚から栄養を吸収して成長します
大西洋を越える旅
変態を遂げ、ようやく目と口を得た個体は大西洋を渡り、はるか遠くカリブ海まで旅立ちます。そこで他の魚の血を吸って2年間を過ごし、繁殖のための体を作ります。
故郷への帰還
成長後、再び大西洋を渡って自分が生まれた川へ戻ります。鼻で藻の匂いを嗅ぎ分け、寸分違わず故郷を目指す執念は圧巻です。
以前はスペイン南部のグアダルキビル川などにも生息していましたが、彼らは非常に温暖化に敏感です。
現在は冷たい水を求め、フランス方面へと生息域を広げており、スペイン国内でこの伝統漁法が守られているのは、今やガリシアだけとなりました。
伝統漁法:家族の絆と「川の音」に捧げる夜

かつては他の魚を獲るための餌や、畑の肥料にすぎなかったランプレア。
現在ではレストランで調理済みの一皿が180ユーロ(飲み物別)にもなるんだとか!
しかし、その漁の現場は過酷そのものです。
- 命がけの現場: 地元の人が「絶対に泳ぎに来ない」と言うほど流れの速い川。かつては光もライフジャケット(Chaleco)もない中、1人か2人の少人数で漁が行われてきました。
- 職人の情熱: 1ヶ月以上かけて編む手作りの網。漁は夜間に限られ、獲れる時期は夜通し、1時間半おきに網のメンテナンスを繰り返します。昨年はシーズン通してわずか4匹という年もありました。
- 継承の理由: 利益を追うビジネスではなく、あくまで家族に代々伝わる漁をつないでいくこと、そして自身がこの漁を愛していることが原動力です。「真っ暗な中、川岸に横たわって川の音を聞くのが好きだ」という職人の言葉に、この伝統の重みが凝縮されていました。
ランプレアはどう料理される?
ランプレアのボルドー風煮込み料理

この料理は、皮をむいて内臓を取ったランプレアを、
- 玉ねぎ
- ニンニク
- パセリ
- 赤ワイン
- ランプレアの血
で煮込みます。
ランプレアの腸詰め

ハムやゆで卵の黄身と一緒に作るソーセージ(腸詰め)です。
その他
- 燻製したランプレアと小さいパスタを一緒に煮込んだ料理
- 卵と小麦粉に絡ませて油で揚げるフライ
- エンパナーダというガリシア風パイの具材
と、料理の仕方は様々です。
実際にランプレアを食べてみた
私が初めて食べたLampreaはこれでした。

パンの上にランプレアの腸詰めとポテトサラダを乗せたもの。
独特の味で好き嫌いが分かれるというので、ドキドキしましたが実際に食べてみると、『なんかどこかで食べたような味。』
特定できなかったのですが、日本人なら普通に食べれる人が多いと思います。
ただ、一緒に食べていたガリシア人の女性は、ランプレアだけ全部食べずに残していました(笑)
最高の調理法とは?
有名なのは血を使った煮込みですが、今回自らのランプレア漁について説明してくれた男性やガイド仲間の女性が「最も美味しい」と断言するのは、炭火焼きでした。
血を使った煮込み料理、炭火焼きと次の機会に試してみたいと思います。
その時はこの記事の中で必ず紹介しますね。
おわりに:マドリードへ繋がるガリシアの魂
この希少なランプレアは、ガリシアだけで消費されるわけではありません。
昔は、近所の人に配ったりしていた時代もあったが、今はそんなこと考えられない。マドリードのレストランへ売る人もいれば、俺たちは個人の消費者に売ってるよ。
と教えてもらった通り、ガリシアからマドリードのレストランへと運ばれ、美食家たちの舌を唸らせています。
もし来年の春、スペインを訪れる予定があるなら、ぜひお品書きに「Lamprea」の文字を探してみてください。
その一皿の向こう側には、ガリシアの漆黒の川で、独り川の音を聞きながら網を守る職人の姿があるのです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。