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スペインのセマナ・サンタのプロセシオンとは?セビリアとマラガの違いを現地目線で解説

2021年2月3日

セマナサンタの宗教行列セビリアとマラガの違いのアイキャッチ画像
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いつこ

ガリシア州公認観光ガイド。サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学観光マネジメント修士課程修了。留学生サポート業務(約4年)や、巡礼専門旅行会社での勤務経験を活かし、現地目線で役立つ情報を発信中。まだあまり知られていない本当のサンティアゴとガリシアの魅力を、日本語で丁寧にお届けしています。

スペインのセマナ・サンタ(聖週間)のニュースや写真でよく見かける、あの三角帽子の衣装の人たちと重厚な山車(だし)。

「インパクトはあるけれど、正直、何をしているのかよく分からない…」

この記事では、そんな疑問にお答えしながら、セビリアとマラガのプロセシオン(宗教行列)の違いを、キリスト教の専門知識がなくても分かりやすいように解説します。

なお、今年のセマナ・サンタの日程や祝日情報、旅行への影響が知りたい方は、先にこちらの記事をどうぞ。

ここでは、「日程」ではなく中身(意味・構造・衣装・セビリアとマラガの違い)にフォーカスしていきます。


1. セマナ・サンタのプロセシオンとは?

セマナ・サンタは、イエス・キリストの

  • エルサレム入城
  • 最後の晩餐
  • 受難と死
  • 復活

までの出来事を思い起こす期間です。

その中心にあるのがプロセシオン(Procesión)=宗教行列。キリストやマリア像を乗せた山車を信者たちが担ぎ、街中をゆっくりと進んでいきます。

1-1. 1週間の流れ(枝の主日〜復活祭)

スペインのセマナ・サンタの枝の主日のプロセシオンで、赤いナサレノとロバに乗るイエス像の山車が進む様子
枝の主日のプロセシオン。赤いナサレノに先導され、イエスがロバでエルサレムに入場する場面の山車。

年によって日付は変わりますが、聖週間のおおまかな流れは毎年同じです。

  • 枝の主日(Domingo de Ramos)
    イエスがロバに乗ってエルサレムに入城した場面を記念する日。受難の始まり。
  • 聖木曜日(Jueves Santo)
    最後の晩餐が行われた日。
  • 聖金曜日(Viernes Santo)
    裁判・磔刑など、キリストの苦しみと死を思い起こす日。
  • 聖土曜日(Sábado Santo)
    キリストの死を追悼する静かな日。
  • 復活祭(Domingo de Pascua)
    キリストの復活を祝う最も重要な日。

各日にはそれぞれの場面を再現する山車があり、行列として町を進みます。


2. 山車の基本|セビリアは「パソ」、マラガは「トロノ」

スペインのセマナ・サンタで行われるマリア像の豪華な山車(パソ)の夜間プロセシオンの様子
セマナ・サンタの夜に行われるマリア像の山車(セビリアのパソの例)

2-1. 山車の呼び方と持ち主

プロセシオンで中心となるのは、キリストやマリア像を乗せた山車です。スペイン語では地域によって呼び名が違います。

  • セビリア:山車=Paso(パソ)
  • マラガ:山車=Trono(トロノ)

これらの山車は、それぞれ信心会「Cofradía(コフラディア)」が所有しています。コフラディアは1年を通して、山車の手入れや行列の準備を行います。

おおよその目安として、

  • マラガ:40以上のコフラディア × キリスト像+マリア像のトロノ → 80以上のトロノ
  • セビリア:約60のコフラディア × 山車2台持ちが多い → 100以上のパソ

同じ「キリストの受難」をテーマにしていても、都市ごと・コフラディアごとに山車のデザインや雰囲気は大きく異なります。

2-2. 山車の重さとスケール

山車の重さは、像や装飾の量によって変わりますが、目安としては…

  • マリア像の山車:およそ1,500kg
  • キリスト像の山車:およそ2,000kg

中には、マラガで5,000kgを超えるトロノもあります。そのような巨大な山車を動かすには、200人以上が担ぎ手として必要になることも。

3. 山車を担ぐ人たち|コスタレーロとオンブレス・デ・トロノ

3-1. 呼び方の違い

  • セビリア:担ぎ手=Costalero(コスタレーロ)
  • マラガ:担ぎ手=Hombres de Trono(オンブレス・デ・トロノ)

3-2. 担ぎ方の違い

セビリアでは、コスタレーロたちはパソの「真下」に潜り込み、背中の上部で重さを支えます。外からは足だけが見えることも多く、「山車がひとりで歩いている」ように見える瞬間もあります。

マラガでは、オンブレス・デ・トロノが山車の外側に並び、肩でトロノを担ぎます。山車の周りをぐるりと取り囲んで担ぐため、一人ひとりの負担は少し分散されますが、それでもひとり当たり30〜40kg、多い場合は100kg近い重さを支えなければならないことも。

いずれの場合も、

  • 体力
  • 精神的な集中力
  • 深い信仰心

が求められます。何時間も続くプロセシオンを支える、見えない主役たちと言えるでしょう。

3-3. 女性の担ぎ手について

以前は女性が山車を担ぐことはほとんどありませんでしたが、近年は女性が担ぐ山車も少しずつ増えています。ただし、オフィシャルなルートを通れないなど、地域やコフラディアによって扱いに差があるのが現状です。


4. とんがり帽子の正体|ナサレノの衣装の意味

セマナ・サンタのプロセシオンに参加する白いナサレノの衣装を着た信者の姿
悔い改めと祈りを象徴するナサレノの衣装。KKKとは無関係のキリスト教伝統衣装。

セマナ・サンタの写真で多くの人が驚くのが、とんがり帽子に目の部分だけ穴が開いた衣装です。

4-1. ナサレノとは?

この衣装を着ている人たちは、Nazareno(ナサレノ)と呼ばれます。受難のキリストに従う「ナザレ人」を象徴する姿で、悔い改めや謙遜、祈りの姿勢を表しています。

初めてマラガでナサレノを見たとき、私も思わず「クー・クラックス・クラン!?」と勘違いしそうになりましたが、もちろんまったく別の起源と意味を持つ衣装です。

4-2. 衣装の違いとルール

長い上着はトゥニカ(Túnica)と呼ばれ、コフラディアごとに色やデザインが決まっています。

  • マラガ:多くの場合、信心会がトゥニカを支給
  • セビリア:トゥニカを個人が購入するケースも多い

同じように見えても、地域やコフラディアによって細かな違いがあり、それを見分けられるようになるとプロセシオンをさらに楽しめます。


5. 熱狂的なファン「カピジータ」とは?

セマナ・サンタの期間中、真夜中になっても山車を追いかけて歩く人たちがいます。彼らは単なる「行列の追っかけ」ではなく、

Capillita(カピジータ)と呼ばれる、プロセシオンの超・詳しいファンです。

  • 全てのコフラディアの歴史や山車の意味をよく知っている
  • どのルートで、何時ごろどの山車が通るのか把握している
  • お気に入りのキリスト像・マリア像がある

もし現地で「自分はカピジータだよ」という人に出会えたら、山車や行列の見どころを教えてもらえるかもしれません。


6. セビリアとマラガのプロセシオンの違い

6-1. 雰囲気の違い

セビリアのプロセシオンは、

  • 山車や衣装が非常に豪華
  • 厳かな雰囲気と熱気が同居している
  • 旧市街の狭い路地を、重厚なパソがゆっくりと進む

マラガは、

  • より「お祭り」の雰囲気が強い
  • 山車(トロノ)が非常に大きく、迫力満点
  • 軍隊が像を担ぐプロセシオンや、サエタ(即興の祈りの歌)が印象的

6-2. どちらを見るべき?

  • 重厚で荘厳な雰囲気を味わいたい人:セビリア
  • 音楽と熱気に包まれたい人:マラガ

どちらも一度は体験してほしい素晴らしいプロセシオンですが、好みや旅行スタイルに合わせて都市を選ぶのもおすすめです。


7. まとめ|プロセシオンの背景を知ると、セマナ・サンタがもっと面白くなる

  • セマナ・サンタの宗教行列はスペイン語でプロセシオン
  • 山車はセビリアでパソ、マラガでトロノと呼ばれ、コフラディアが一年かけて準備する。
  • 山車を担ぐ人は、セビリアではコスタレーロ、マラガではオンブレス・デ・トロノ
  • とんがり帽子の人物はナサレノで、悔い改めと祈りを象徴する。
  • セビリアとマラガでは、山車の豪華さ・担ぎ方・雰囲気が大きく異なる。
  • カピジータと呼ばれる熱心なファンもいて、プロセシオンは信仰と文化が融合したスペインならではの行事。

セマナ・サンタは、日程や混雑だけを見ると「旅行しづらい時期」と感じるかもしれませんが、その背景にある意味を知ると、スペインの文化や信仰がぐっと身近に感じられるはずです。

今年のセマナ・サンタの日程や、旅行の注意点については以下の記事で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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