この記事では、最も新しいサンティアゴ巡礼の正式ルートについて紹介します。
コロナ禍で私たちが移動することにまだまだ慎重だった2020年12月中旬、サンティアゴ大聖堂はある道を正式な巡礼ルートに認定しました。
本文の中では、最新の巡礼ルートの基本情報から筆者が実際に歩いて感じたことを順番にお話ししていきます。
興味がある方は、是非最後までお付き合い下さいね。
最新のサンティアゴ巡礼ルートの名前は?
コロナ禍に認定された最も新しいサンティアゴ巡礼の正式ルートの名前は…
Camino de la Ria de Muros y Noia(カミーノ・デ・ラ・リア・デ・ムーロス・イ・ノイア)。
長くて覚えづらい名前ですが、10回ぐらい唱えれば頭に入るでしょう(笑)
日本語では、ムーロス・ノイアのリアス海岸の道という感じでしょうか?
Ria(リア)とは、海面の上昇により陸地が海に沈むことで形成されるギザギザした海岸線を意味するスペイン語。
リアス式海岸のリアスは、スペイン語のリアから来ているのをご存知の方もいるでしょう。
複雑に入り組んだ海岸線は自然の防波堤となり、湾内の波がおだやかなので養殖に向いています。
ガリシア地方に16あるリアのひとつ、ムーロス・ノイアでは100以上のムール貝の養殖筏を見ることができます。
新しいサンティアゴ巡礼ルートの歴史
新しい巡礼ルートといっても、他のルート同様に古くからの歴史があります。
このルートが巡礼路であったことを記す最も古い記述は、12世紀の第2・3回十字軍遠征。
1149年、イギリスのダートマス港を出発し、ノイアの港に到着した船の数は170以上。
人々はエルサレムへ向かう前に、聖ヤコブのご加護を求めるためにサンティアゴまで巡礼しました。
12世紀後半から、ノイアの港は聖地サンティアゴの海の玄関口とされ、海を渡ってやってきた多くの巡礼者は、ノイアからサンティアゴを目指したと言われています。
海路と陸路の巡礼路ルートというと、イギリス人の道があります。
14世紀末ぐらいからイギリスや北ヨーロッパの港から出発した船が向かった当時ガリシアで最も重要な港町はコルーニャでしたが、ムーロス・ノイアに到着した船の中にも巡礼者はいたわけです。
リア・デ・ムーロス・ノイアの道は、イギリス人の道のサブルートと理解していいかと思います。
16世紀には、神聖ローマ皇帝でありスペイン国王のカルロス1世が、巡礼者に通行税を取っていた総督に対して…
『400年前に十字軍が巡礼した歴史的な道を歩く巡礼者に対して税金を取るとは何事か、即刻辞めるように命令する』
と記した手紙も残っています。
どのルートにもそれぞれの歴史があり興味深いですが、歴史の話はこのぐらいにして、次にルートの特徴や行程、見所、歩いてみて私の感じたことをご紹介していきます。
新しい巡礼ルートの特徴や距離は?
他のルートと比べて大きな特徴は次の2つです。
- ムーロスとポルト・ド・ソンの出発地点が2つ
- Y字型のルート
どの出発点から歩き始めるかは自由ですが、次のように歩きます。
step.1
ムーロスからノイアまで歩いて到着。
step.2
ノイアからもうひとつの出発点であるポルト・ド・ソンへ移動する。
step.3
ポルト・ド・ソンから再びノイアを目指して歩く。
step.4
ノイアに着いたら、今度はサンティアゴを目指して歩く。
注意
ルートの距離数は95.8㎞で、公式サイトでは下記11の区間が設定されています。
- Stage 1: Muros - Esteiro (14 km)
- Stage 2: Esteiro - Cruceiro de Roo (8,5 km)
- Stage 3: Cruceiro de Roo - Serra de Outes (3,5 km)
- Stage 4: Serra de Outes - Noia (14,8 km)
- Stage 5: Porto do Son - Portosin (8 km)
- Stage 6: Portosín - Noia (7,7 km)
- Stage 7: Noia - San Xusto (8,9 km)
- Stage 8: San Xusto - Urdilde (9,3 km)
- Stage 9: Urdilde - Alqueidón (5,5 km)
- Stage 10: Alqueidón - Bertamiráns (2,7 km)
- Stage 11: Bertamiráns - Santiago de Compostela (12,9 km)
まだ完歩していませんが、2022年の夏にこのルートを歩きました。
実際に歩いて感じたことをいくつかのポイントにまとめてみましたので参考にして下さい。
最新の巡礼ルートを歩いて感じたこと
何日で歩ける?
2022年の夏に歩いたのは下記の区間です。
- ポルト・ド・ソンからノイアまでの15,7㎞(上の行程5&6)
- ムーロスからCruceiro de Rooまでの22,5㎞(上の行程1&2)
ポルト・ド・ソン~ノイア間は、当時10歳と8歳の子供達と一緒に、ムーロスからの約23㎞は1人で歩きました。
上りが少しキツイ区間もありますが、1日15~20㎞かそれ以上のリズムで歩けるのであれば1週間以内で完歩できます。
長く休みが取れない、1週間の巡礼でサンティアゴに到着したい人にちょうどよい距離だと思います。
標識や宿の状況はどう?
巡礼路を歩く時に気になるのが標識や宿の問題です。
今、本文を読んでいるあなたがサンティアゴ巡礼路を歩いたことがあるかないかでイメージも変わってきますが…
ガリシア州内の巡礼路では、モホンと呼ばれる石の標識が多く設置されていて、アルベルゲと呼ばれる公共の巡礼宿もあります。
しかし、この道は正式ルートになりましたが、モホンも公共のアルベルゲもありません。
その理由は、サンティアゴ大聖堂はルートを認定しても、巡礼路沿いの標識の設置や巡礼宿の建設といったインフラ整備を担当するガリシア州政府がこの道を正式ルートとして認めていないからです。
しかし、モホンの代わりにペンキで塗った黄色い矢印の標識があり、道が通る町や村に宿泊施設があります。
標識に関しては私も歩く前に少し心配していましたが、黄色い矢印がこまめに書かれていました。
ムーロス~エステイロ・デ・ロー区間で矢印が見つからずに立ち止まって探したことはありましたが、物凄く困ったということはありませんでした。
新しいサンティアゴ巡礼ルートの魅力は?
あくまでも私の個人的な意見ですが…歩いて見て感じた点を3つ紹介します。
海の景色の多さ
約1週間でサンティアゴに到着できる出発点で海を見ながら歩けるルートはとても少ないです。
ポルト・ド・ソンやムーロスの町で目の前に広がる海の景色を見ながら歩いた時のあの解放感!
特にポルト・ド・ソンを出発した時の気持ちよさは今でも良い思い出として残っています。
その後、巡礼路が森の方へ入っていっても、遠目に海の景色を楽しめる箇所も何度もありました。
比較的短い距離のルートでこれだけ海の景色の割合が高いのは凄いなと思いました。
夏のカミーノにもおすすめ
フランス人の道など『夏のカミーノは暑いし、人も多いので避けます。』という声を聞きます。
しかし、私は8月でもこのルートを歩くのはありだなと思いました。
実際に私は8月下旬に、ポルト・ド・ソンとムーロスからの区間を午前11時過ぎに歩き始めました。
8月というのに通常の巡礼開始時間よりもだいぶ遅れてのスタートです。
12~14時まで気温が上がって確かに暑かったですが、海風の影響もあり暑さを不快に感じませんでした。
巡礼路沿いの教会
ムーロスにあるサン・ペドロ教会の写真ですが、ヨーロッパの教会でもまず珍しいあるものを見ることができます。
それは何かというと、下の写真です。
聖水盤の中でとぐろを巻いているヘビ! なぜ、聖水盤にヘビがいるのか?
港町に作られた教会ならではの見所ポイントもあり、是非見学してほしい教会です。
ノイアの聖マルティーニョ教会やポンテナフォンソの中世橋など、巡礼路沿いにある教会や修道院などの建物を見るのが好きという人も楽しめるポイントはありますので、随時情報を更新していきたいと思います。
新しい巡礼ルートに興味がある方へ
本文を読んでこのルートに興味を持ってくれたらとても嬉しいですが、次のように考えてる方は他のルートを選んだ方がいいでしょう。
- サンティアゴ巡礼は、やっぱりアルベルゲに泊まりたい。
- 巡礼の魅力は、多くの巡礼者との触れ合いと交流に限る。
- 巡礼では、出来るだけ長い距離を歩きたい。
歩いている巡礼者や巡礼者向けのサービスがないことをに不安を感じるのは当然です。
認知度がまだ低いことや本文で説明した事情があるので、テレビや映画などで見た巡礼路のイメージとは分けて下さい。
しかし、ペンキで書かれた黄色い矢印や巡礼者向けサービスが整備されていない点が、逆に昔のカミーノっぽくてよいと感じる人もいます。
ひとりで海や森の景色を独り占めしながら、自分のペースでゆっくり歩きたいという方にはお勧めです。
また、新しいルートなので有名な巡礼アプリ等でもまだ情報が少ないはず。
ペンキの標識が消えたりして道に迷うのを避けたいなら、ルートトラックをダウンロードして歩いてください。
2024年中にこの道の全区間を歩く予定ですので、気になる方は本文の情報更新をお待ちください♪
本文で紹介したムーロスにあるとっても素敵なホテルについても是非ご覧くださいね。
最後までお読み下さりありがとうござました。