サンティアゴ巡礼の中で、コロナ禍前から人気が出ているルートといえば、ポルトガルの道(Camino Portugués)。
巡礼事務所が発表する2023年の統計情報を見てもその傾向は変わらず、むしろ、これからもっと歩く人が増えると私は見ています。
ポルトガルの道は、ポルトガルのリスボンからサンティアゴへ北上するルートと言われていますが、
実は、ポルトガル内で沢山のルートが存在します。(この先、また増えるかもしれませんが…)
色んなルートがあるから、選んだルートによって道の風景や楽しみ方が変わる。
そう考えると、なんかワクワクしませんか?
本文では、次のポイントに絞ってポルトガルの道の魅力をお伝えします。
- ポルトガル内にある巡礼ルートの数
- ポルトガルの道のおすすめルート
- ガリシア州内のポルトガルの道の楽しみ方
- サンティアゴ・デ・コンポステーラでのボタフメイロ
実は、ポルトガルの道すごく興味がある!という方の参考になれば嬉しいです。
ポルトガル内の巡礼ルートは全部でいくつ?
ポルトガル内に存在する巡礼ルートの数は、なんと10個!
2021年に参加したサンティアゴ巡礼の展示会でこの情報を知りました。
昔、巡礼者は自分の住む家から出発していたことを考えれば、ポルトガル各地にルートがあっても不思議はありません。
しかし、アルベルゲがまだ十分でないルートもあるので、現時点でおすすめなルートは下の2つ。
- ポルトガル中央ルート(Camino Portugués Central)
- ポルトガル海岸の道(Camino Portugués de la Costa)
早速、ひとつずつ見て行きたいと思います。
インスタグラムのアカウントで、ポルトガルの道のルートに関するミニガイドを投稿しています。興味のある方は是非!
ポルトガルの道セントラル・ルート(Camino Portugués Central)
他のルートと区別して『ポルトガル・セントラル・ルート』と呼ばれていますが、一般に、日本語でポルトガルの道と呼ばれるのがこのルート。
ポルトガルの道全体の魅力は、ひとつのルートでポルトガルとスペインを楽しめる点。
もしも、あなたが『セントラル・ルートをリスボンから歩きたい!』という場合…
- リスボン
- コインブラ(ポルトガル第3の都市。コインブラ大学は2013年に世界遺産に登録)
- ポルト(ポルトガル第2の都市)
- バルセロス(ポルトガルのシンボル「ガロ(雄鶏)」の伝説が生まれた場所)
など、ポルトガル内の重要な都市を通るので、ポルトガル観光も合せられる嬉しいルートです。
でも、さすがにリスボンからはちょっと遠い…と感じますよね?
実際、国際空港があるポルトから巡礼を始める人がとても多いです。
ポルトからは、海岸ルートをスタートできるので続いて海岸ルートを簡単に紹介します。
Camino de la Costa(海岸の道)
出典: https://historiadegalicia.gal
ポルトからバレンサまで1週間ほどかけて歩くコース。
15世紀以降、沿岸部に住むポルトガル人や外国からポルトガルの港についた外国人が利用したこのルートは、ポルト市内や空港など大都市の景色から始まりますが、2日目以降から海を見ながら歩きます。
ちなみに、ポルトガル内の海岸ルートの標識は、こんな感じ。
- 黄色い矢印は左上
- 近くにアルベルゲがある場合は右上にAと書いた建物のイラスト
- 建物のマークの下に、アルベルゲがある方向を示した矢印と距離
が表示されています。
カミ―ニャ(Caminha)からフェリーで川を渡り、スペイン・ガリシア州のグアルダ(Guarda)から再びまた海岸線を歩きます。
潮の満ち引きや天候などの理由で運航しないこともありますので、この点考慮しておくといいでしょう。
さて、ここからはガリシア州内のポルトガルの道のセントラルと海岸ルートでのポイントやポルトガルの道を歩くから出来る特別な体験を紹介していきますね。
ガリシア州内のポルトガルの道おすすめポイント
セントラル・ルートが通るガリシアの玄関口
ポルトガルとスペイン間の国境を渡る方法は、次の2通り。
- 海岸ルートが通るカミーニャからフェリーに乗る。
- バレンサからトゥイへ橋を歩いて渡り、中央ルートを進む。
国境を歩いて渡るってなかなかできない体験。
城壁に囲まれたバレンサという小さい村を通りすぎ、橋を渡って到着するトゥイ(Tui)は大聖堂やユダヤ人地区があったり、ガリシアの歴史の中でも重要な町です。
セントラル・ルートを歩いて巡礼証明書をもらえる最低100㎞を満たす場所ですので、ここからスタートする巡礼者も多いです。
ミーニョ川を横目に見ながら、旧市街内の路地を散策していると、住んでもいないのになぜか居心地よくて私は好きです。
巡礼路沿いにある聖クララ修道院で買えるアーモンドの粉で作ったお魚のお菓子がとても可愛いくて甘いです。
アメリカ大陸到着!最初のニュースを受け取った町
2021年のコロナ禍の夏、ポルトガル海岸ルートをグアルダからサンティアゴを歩きました。
別の機会にご紹介したいと思いますが、グアルダから大西洋を見ながら北上して到着するバイオナ(Baiona)という町があります。
コロンブスがアメリカ大陸へ到着した後、スペインへ帰還したピンタ号がここに寄港。
ヨーロッパで最初にアメリカ大陸到着の知らせを受けた場所で、毎年この歴史的出来事を祝うお祭りが開催されます。
バイオナは、夏に海や涼しい夏を求めてスペイン国内から人が訪れる観光地であり、スペイン前国王フアン・カルロス1世も夏によく訪れます。
彼が、ガリシアの新鮮な魚介類を求めて訪れるレストランがあり、その名はRocamar(ロカマル)。
店内に入って、すぐに前国王がお店を訪れた時の写真を見ることができます。
テーブルの横の窓から見える海の景色も素晴らしいですが…
サービスされた魚介類は、本当に美味しかったです。
非常に広い店内ですが、スペインのお昼時間が近づくとあっという間に人で埋まっていました。
地元をよく知るインフルエンサーさんから、この辺りでは祝日などに家族で食事をする時の定番の場所だと教えてもらいました。
キビキビと動くお店のスタッフは、あちこちのテーブルで鮮魚の岩塩包み焼きをサービスしていて、これもまた美味しいでした!
インスタグラムのアカウントで、ポルトガルの道海岸ルートを歩いた時の投稿をアップしています。興味のある方は是非!
観光で1日余計に滞在する価値あり!ポンテベドラ
ポルトガルの道セントラル・ルートと海岸ルートは、レドンデラという町で合流し、サンティアゴまで北上します。
レドンデラから18㎞歩いて到着するのが、ガリシア州ポンテベドラ県の県都であるポンテベドラ市。
巡礼路を歩いてポンテベドラ市に入ってすぐの場所に、公共のアルベルゲ(巡礼宿)があります。
ここで休んだ巡礼者の中で、建物の辺りがポンテベドラ市だと思って過ごしてしまい、翌朝に街の中心部や旧市街を通ってびっくりする人がいるそうです。
歩いた後は、宿の近くでゆっくりしたい気持ちもわかりますが、非常に勿体ない!
別記事『ポンテべドラ市内のおすすめスポットやお祭り情報まとめ』で詳しく紹介しているので、是非合わせてお読みくださいね。
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ポンテべドラ観光のおすすめスポットやお祭り情報まとめ!
続きを見る
ポンテベドラで1日ゆっくり滞在するなら、巡礼再開前にミシュラン1つ星レストランでの食事はどうでしょうか?
レストランの名前は、オ・エイラド・ダ・レニャ(O Eirado da Leña)。
地元の食材を知り尽くしたシェフが作るお料理は、ひとつひとつの食材を丁寧に引き出していました。
毎朝焼いている自家製のパンが、またモチモチしていて美味しく、パンだけ何度もお替りしたい気持ちを押し殺しました。
9品からなるメニュー、各料理に合わせてサービスされるワインのセレクトもとても良かった~!
本当に贅沢な時間を過ごすことができました。
ミシュランの星レストランのメニュー料金は、上を見ればきりがないぐらい高いですが、その中では高い方ではないと思います。
ガリシアのミシュランガイド最新情報
機会があれば、是非!
それでは、再び巡礼に戻って、他のルートでは味わえない特別な体験をご紹介しますね。
使徒ヤコブの遺体が通った道を体験
ポンテべドラからセントラルルートを歩いていくと、途中でバリアンテ・エスピリトゥアルという迂回路を進むことができます。
- PONTEVEDRA-ARMENTEIRA: 23.2 km
- ARMENTEIRA-VILANOVA DE AROUSA: 22.7 km
- VILANOVA DE AROUSA-PADRON: 27.7km
アルメンテイラ(ARMENTEIRA)にある修道院では、巡礼者のミサが行われます。
アルメンテイラからは、石と水のルートという地元の人も歩いているハイキングコースを歩きます。
当時4歳の娘も歩けるぐらいのルートで、とにかく緑と水の音に癒されます。
上で紹介した3区間を歩く事のもいいのですが、ビラノバ・デ・アロウサ(Vilanova de Arousa)からポンテセスレス(Pontecesures)まで、聖ヤコブの遺骸を運んだ海の旅、La Traslatio(ラ トラスラティオ)を楽しむ船の旅を体験することができます。
ガリシアのリアで働く人たちの様子やクルセイロと呼ばれる石の十字架などを見ることができる他のルートや区間では味わえない特別な体験です。
インスタのアカウントでこの旅の様子や情報をお伝えしているので、興味のある方は是非!
ポンテセスレスに着いてから橋を渡って数キロ歩くとパドロンに到着し、再びポルトガルの道に合流します。
この迂回路はガリシア州政府に認められた公式ルートでありませんが、トゥイやポリーニョから出発し100㎞以上歩けば迂回路経由でサンティアゴへ到着しても巡礼証明書はでます。
パドロン~サンティアゴ間にある超特別なパソ
パドロンを過ぎるとサンティアゴまであともう少し。
サンティアゴが近づいてくる楽しみと同時に、旅が終わりに近づいてきて寂しいと相反する感情が沸き上がる頃。
そんな時に、パソ・デ・ファラメジョという特別な場所を何気なく通りすぎてしまう巡礼者が多いです。
パソとは、ガリシアの田園地方に建てられる大邸宅を意味します。
ガリシアで有名なパソはいくつもありますが、主人が自らパソの庭や建物の中を案内してくれるのはここだけ。
とにかくお庭が素晴らしいし、建物の中にはサンティアゴやマドリードで開催される展示会に送るぐらい非常に貴重な美術品があります。
30代以上のガリシア人ならばクリスマスに行う州政府首相の挨拶の場所もこのパソだったことを知って、びっくりする人が多いです。
約10年前からオーナーであるゴンサロさんを知っていますが、海外で働いていた彼がガリシアに戻ってきてから精力的にパソ周辺の環境整備に尽力し、敷地内にイベント会場を建設したりと周りの環境に配慮しながら、パソを紹介されています。
敷地内は、ポルトガルのオリジナルの道が通っていて、見学中に歩く事も出来ます。
巡礼聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラのボタフメイロ
ついに、サンティアゴ・デ・コンポステーラ到着。
巡礼をしてサンティアゴで見たいのは、やっぱりボタフメイロ。
いつ見られるか分からないからこそ、実際に目の前で見た時の感動は言葉では表せないものがあります。
ポルトガル人の道だからもらえる巡礼証明書?
サンティアゴ到着前に多くの巡礼者が止まるパドロンでは、特別な巡礼証明書を獲得することができます。
詳細は、下で紹介している関連記事を合わせてご覧ください。
まとめ
- ポルトガルの道は、リスボンからサンティアゴまで北上する道だが、ポルトガル内で10個のルートがある。
- ポルトガル内でルートが複数あるが、代表的なのはセントラル・ルートと海岸ルート。
- ポルトガルとスペインの国境は、フェリーまたは、歩きで超えることができる。
- セントラル・ルートと海岸ルートは、ガリシア州のレドンデラで合流してサンティアゴまで目指す。
- バリアンテ・エスピリトゥアルという非公式ルートで、舟の旅を体験することができる。
ポルトから中央ルート?海岸ルート?と迷ったら
聖ヤコブ祭情報
最後まで読んで頂きありがとうございました。