観光でスペインへ行くと、楽しみなのが毎日の食事。
最初は「生ハム美味しい!アヒージョ最高!」と感動するものの、旅行3日目あたりから異変を感じる日本人観光客が後を絶ちません。
「……なんか、胃が重い」
「口がさっぱりしたものを求めている」
「もうオリーブオイルは勘弁して……」
それもそのはず。スペイン料理は日本食に比べて圧倒的にオイリーで、塩分も強め。さらに一皿の量が多いため、知らず知らずのうちに胃腸に負担がかかってしまうのです。
そこで今回は、ガリシア在住ガイドである私が、「胃が疲れた時にこそ選んでほしい、胃に優しいスペイン料理」を厳選してご紹介します。
メニュー選びと、魔法の注文フレーズを知っているだけで、旅行中の体調管理が劇的に楽になりますよ。
【緊急対策】とにかく胃を休めたい時の「飲むサラダ・スープ」
食欲がない時でも、スープなら喉を通ります。スペインには「胃薬」代わりになる優秀なスープがあります。
1. ガスパチョとサルモレホ(Gazpacho / Salmorejo)
アンダルシア生まれの冷製スープ。「飲むサラダ」とも呼ばれ、ビタミン補給に最適です。
トマト・ニンニク・オリーブオイル・パンなどをミキサーにかけて作りますが、火を通さないため酵素が生きており、胃もたれした体に染み渡ります。
- ガスパチョ: キュウリやピーマン、ビネガーが入り、サラッとしていて飲み物に近い感覚。酸味が効いていてサッパリします。
- サルモレホ: パンとオイルの量が多く、とろみがあります。食べるスープという感じで、腹持ちが良いです。
2. ソパ・デ・ポジョ(Sopa de Pollo / 鶏のスープ)
メニューに載っていなくても、多くのレストランに置いている「隠れ回復食」です。
鶏肉と細いパスタ(フィデオ)が入っただけのシンプルなコンソメスープですが、日本の風邪の時のお粥のように、弱った胃を優しく温めてくれます。
注文のコツ:
メニューになくても「Hay Sopa de Pollo?(アイ・ソパ・デ・ポジョ?/チキンスープありますか?)」と聞いてみてください。意外と出してくれます。
3. カルド・ガジェーゴ(Caldo Gallego)
私の住むガリシア地方の冬の定番。豚肉で出汁を取り、ジャガイモ・カブの葉(グレロス)・白インゲン豆を煮込んだスープです。
豚の脂(ウント)が入るためコクはありますが、クタクタに煮込まれた青菜と豆の味わいは、日本人にとって「お味噌汁」のような安心感があります。
初めて飲んだ時、「菜っ葉のお味噌汁だ!」と感動したのを覚えています。体を芯から温めたい時におすすめです。
【野菜補給】油っぽくない「野菜メイン」の頼み方
「野菜が食べたい」と思ってサラダを頼んだら、ドレッシング(油と塩)でベタベタだった……という経験はありませんか?
ここでは「油をコントロールできる」野菜料理を紹介します。
4. エンサラダ・ミクスタ(Ensalada Mixta / ミックスサラダ)
スペインのどこの店にもある定番サラダ。レタス、トマト、玉ねぎ、ツナ、ゆで卵などが山盛りで来ます。
ここで重要なのが「味付けなし(Sin aliñar)」で頼むこと。
スペインでは通常、テーブルに置かれたオリーブオイル・ビネガー・塩を使って自分で味付けをしますが、店によっては最初から大量にかけて持ってくることがあります。
「Sin aliñar, por favor(シン・アリニャール、ポル・ファボール/味付けしないでください)」と伝えれば、ただの生野菜盛り合わせが来ます。これなら自分の好きな量のオイルと塩で、さっぱり食べられます。
5. メネストラ(Menestra de verduras)
温野菜が食べたい時はこれ。ニンジン、インゲン、アーティチョーク、グリーンピースなどをブイヨンで煮込んだ料理です。
生ハムが入ることもありますが、基本的には「野菜のごった煮」。揚げ物続きの毎日に、ホッとする優しさをもたらしてくれます。
6. エスカリバーダ(Escalivada)
カタルーニャ地方の伝統料理。パプリカ、ナス、玉ねぎなどをじっくりオーブンで焼いた焼き野菜です。
焼くことで野菜の甘みが引き出されており、油で揚げたり炒めたりしていないため、非常にヘルシー。魚やお肉の付け合わせとしても優秀です。
7. ピスト・マンチェゴ(Pisto manchego)
スペイン版ラタトゥイユ。トマト、ズッキーニ、ピーマンなどをオリーブオイルで炒め煮にしたものです。
野菜をたっぷり摂れますが、上に乗ってくる目玉焼きが「揚げ焼き(多めの油で揚げる)」スタイルであることが多いので、本当に胃が辛い時は「目玉焼きなし(Sin huevo)」にするのも一つの手です。
【メイン料理】肉・魚は「ア・ラ・プランチャ」一択
メイン料理で「油少なめ」を狙うなら、キーワードは「ア・ラ・プランチャ(A la plancha/鉄板焼き)」です。
「フリート(揚げ物)」や「サルサ(ソース煮込み)」は油の使用量が多いので避けましょう。
8. ナバハス(Navajas / マテ貝)
ガリシア名物のマテ貝。鉄板でサッと焼いて、レモンを絞るだけ。
素材そのものの塩味と旨味が強いので、余計なソースや油は不要です。最高の「低脂質・高タンパク」メニューと言えます。
9. 白身魚のプランチャ(Merluza a la plancha)
スペインで最もポピュラーな白身魚「メルルーサ」の鉄板焼き。
日本のレストランで食べるような上品な味わいで、癖もなく、胃への負担も最小限。付け合わせのポテト(フライドポテトの場合が多い)を茹でじゃがいも(Patata cocida)に変えてもらえれば完璧です。
【要注意】「あっさり」に見えて実はオイリーな料理
最後に、「見た目はヘルシーそうだけど、胃もたれ中は注意が必要」な料理をお伝えします。これらは体調が良い時に美味しくいただきましょう。
10. ピミエントス・デ・パドロン(Pimientos de Padrón)
「ししとうみたいなピーマン」として人気ですが、調理法は「素揚げ」です。
野菜ですが、油をしっかり吸っています。美味しいですが、胃が弱っている時に一皿全部食べるとダメージを受けることがあるので、シェアして数個つまむのが正解です。
11. タコのガリシア風(Pulpo a la feira)
茹でダコなのでヘルシーに見えますが、仕上げにオリーブオイルを「これでもか」とかけます。
お皿の底に油が溜まるほどの量なので、さっぱり系ではありません。もし頼むなら、油をよく切って食べるか、「Aceite a parte(アセイテ・ア・パルテ/オイル別添え)」をお願いしてみるのも上級テクニックです。
まとめ:自分の胃袋を守れるのは自分だけ
スペイン旅行を楽しむためには、体調管理が何より大切です。
「せっかくだから」と無理して名物料理を食べ続けるのではなく、3日に1回はこういった「胃を休めるメニュー」を取り入れてみてください。
- スープや煮込み野菜を活用する
- サラダは「味付けなし」で頼む
- 調理法は「プランチャ(鉄板焼き)」を選ぶ
この3つを意識するだけで、帰国するまで元気にスペインの食文化を堪能できるはずです。
美味しいガリシア料理も、万全の胃袋でお待ちしています!
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胃の調子が戻ってきたら、現地の美味しい定食や、新鮮な食材が並ぶ市場にも挑戦してみてください。
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