あなたの目的に適した修士課程の専攻が重要ですが…
数多くの修士課程プログラムから、これだと思うものを選ぶのは決して簡単な事ではありません。
という疑問をお持ちの方もいると思います。
英語圏と比べると、スペインの大学院留学経験者の話を聞く機会もあまりないでしょう。
本文では、大学院留学の経験者である私が実際の体験談を振返り、修士課程を選ぶ時に知っておきたかったことを教えます。
あなたが納得して修士課程プログラムを選ぶ参考材料となれば嬉しいです。
スペインの修士課程にある2つのタイプ
スペインの修士課程には、下に紹介する2つのタイプがあります。
- Máster Título Propio(マステル・ティトゥロ・プロピオ)
- Máster Oficial(マステル・オフィシアル)
(以下、Master propioとMaster oficialと各自記載します。)
修士課程の種類が2つある経緯
1999年、EUのメンバー国はヨーロッパの学生の流動化を推進するため、EU諸国内の高等教育の水準や学位認定を揃えることに合意しました。
ボローニャ宣言
スペインの大学で提供する修士課程の多くは、各大学が独自に作り単位を認めていましたが、ボローニャ宣言後、
- 大学独自のものからオフィシャルなマスター(Master oficial)になったもの
- そのまま大学独自のものとして存続しているもの
の2種類に分かれました。
2つの修士課程を比較
Máster Título Propio | Máster Oficial | |
---|---|---|
単位数と期間 | 最低50単位(1 or 2年) | 60~120ECTS(1 or 2年) |
価格 | 各大学が決定 | スペイン教育省が決定 |
博士課程アクセス | NO | YES |
教授陣 | 大学の教授陣と企業や国際機関からの講師 | 博士号を取得する大学の教員 |
進学の条件 | 学士号もしくは職務年数が条件になる | 学士号 |
研究職向け | NO | YES |
企業向け | YES | NO |
単位数と期間の違い
Máster Propioは、最低50単位、プログラムによって60単位の取得が必要になります。
期間にすると、1年で終了するマスターもあれば2年のものもあります。
Master oficialも期間は1~2年となりますが、単位の表記がEU圏内でも認められるECTS(European Credit Transfer System)となっています。
教授陣の違い
Master oficialの教鞭に立つのは、博士号を取得する大学在籍の先生であることと教育省が決めています。
一方、Master propioでは、修士課程のコースを作った大学で決めることができるので、国際ビジネスの修士コースで大学教授陣の他に、企業や国際機関で働く人が講師を招待することができます。
招待講師数は、修士課程プログラムに関わる講師の最大約半数まで占めることができます。
修士課程の学費
私立と公立で学費が大きく異なるのは想像がつくと思いますが、公立大学の場合でも勉強する自治州や学部によって授業料が異なります。
私が勉強した頃の情報になりますが、Máster oficialでは1年間の修士プログラム(60ECTS)が2,000€以下のものがあるのに対し、Máster propioの学費はOficialの2~3倍、もしくはそれ以上する場合も珍しくありませんでした。
値段が高くても修士課程修了後の就職に有利な内容のプログラムには人が集まりますし、授業料が安くても定員割れするMaster oficialがあるのを私は自分が通っていた大学内で見ました。
入学のための学位認定の方法は?
教育システムが異なる日本の学士号は、スペイン教育省による学位認定手続きをとって認めてもらう必要があります。
Homologación(オモロガシオン)といいます。
認定されれば、スペインのどの大学や就職先へも大卒者として提出できますが…
オモロガシオンは申請から認定を受けるまでにかなりの時間がかかります。
私の場合は、入学する大学のみに日本で学士を終えていることを認めてもらうEquivalencia(エキバレンシア)という手続きを取りました。
進学の条件として知っておくといい点だと思いますが、Master propioでは職務年数が条件になる場合もあります。
読者からの質問1
エキバレンシアを発行してもらったら、他の大学にも提出することはできますか?
エキバレンシアは、スペイン教育省による公の学位認定がない学生(=学士号を持っていることを証明できてない)に、証明書(翻訳付き)を提出して許可が降りれば、うちの大学で勉強できる可能性をあげますよという大学側の特別対応。
他の大学には提出できないと私は理解しています。
どの大学にでも提出できるのは、スペイン教育省からの学位認定書であるオモロガシオンのみです。
読者の質問2
エキバレンシアの手続きの際、提出する証明書に付帯させる翻訳書についての質問です。翻訳書は法的に認可されたものでなければならないと認識しているのですが、翻訳書はどうやって獲得されたのですか?またその時間を教えて下さい。
日本の大学の卒業証明書や成績証明書は、日本のスペイン大使館で翻訳証明をお願いしました。
自分が作成したスペイン語翻訳文が日本語原文書(公文書)の忠実な翻訳であると大使館の方に確認していただき、書類に証明の印鑑を押してもらいました。
時間に関しては、翻訳をチェックしていただき、修正したりするのでその都度変わると思いますが、私の時はとても早く対応していただいた覚えがあります。
いずれにしても、詳細は、直接日本のスペイン大使館へご相談下さい。
エキバレンシアに関する質問には、私の体験をもとにお答えしますが、必ずご自分の希望大学の担当者に直接お問合わせ下さい。
よろしくお願いします。
どっちの修士課程がいいの?
修士課程の種類でどちらがいいとか悪いとかはありませんが、教授陣の所でも少し説明したようにMaster propioの方は実社会に出てから必要な専門知識やスキルをつけるようにデザインされているものが多いと思います。
修士課程の後、希望する分野や企業で働きたいならMaster propioの内容があなたのニーズをより満たせるでしょう。
一方、Master oficialはアカデミックの面が強いと言えます。
研究職を希望し博士課程への進学も考えるなら、博士課程へアクセスできるMaster Oficialを選んでください。
企業向けならMaster propio、研究職ならMaster oficialという分け方ができるかと思います。
大学院留学経験者からのアドバイスは?
私が選んだ観光マネージメント(Master oficial)の修士課程プログラムは、観光以外の学士号でも入学が認められました。
希望する修正課程コースの受け入れ条件を確認しましょう。
勉強は大変でしたが、スペインの大学の修士課程で新しい分野を選ぶことも可能です。
修士課程修了後は観光関係の仕事がしたいと思ったので、観光業の実践的知識を学べるプログラムを希望していました。
授業料が安さやコース内容も魅力的で選んだものの、日本で選んだ時に修士課程に2つのタイプがあることや違いについて全く把握していませんでした。
逆に、Oficialという名前でポジティブに理解していたぐらいです。
いざ大学で授業に参加してから気づいたのは、授業の内容がアカデミックな内容が多くて最初はとても不満でした。
最終的に2年間の修士課程で多くのことを学び、自主的に取り組めばその分吸収できると気づきましたが・・・
と、考えることも正直あります。
『スペインで勉強したい。』という声を聞きますが、『スペインで何を勉強して、将来何をしたいのか。』を考えてから、関心がある分野の修士課程のコースを大学別に見ていくと、自分で納得できる選択が出来るのではないかと思います。
まとめ
- スペインの修士課程には、Master oficialとMaster propioのふたつがある。
- 修士課程の期間は、1年と2年のものがある。
- 各修士課程の特徴を理解したうえで、自分のキャリア目的に合わせたプログラムを選ぶのが大事。
- スペインの地方や大学のプログラムによって料金がかなり変わる。
- 修士課程のプログラムで、全額をカバーするものではないが奨学金を用意しているものがある。
注意
最後まで読んで頂きありがとうございました。