「日本がなければ、D-due(デー・ドゥエ)はおそらく消えていたでしょう」
デザイナーのチャロ・フロハンは、かつて地元紙のインタビューでそう語りました。
コロナ禍という未曾有の危機。D-dueを存続させたのは、日本のファンの存在でした。
「この素晴らしいブランドを失くしてはいけない」――。
日本のD-dueファンのお客様がコロナ禍に沢山の洋服を買って下さったそうです。
私は普段、ガリシア公認ガイドとして活動していますが、10年ほど前からD-dueと日本のインポーター様との間で通訳を務めさせていただく機会があります。
この記事では、ブランドの基本情報と共に、仕事を通じて触れた「ガリシアのブランドと日本の深い絆」についてお話ししたいと思います。
ガリシア発のブランド「D-due(デードゥエ)」とは?
ブランド名には「ダブルミーニング」や「二つの方向から」という意味が込められています。
「一人で考えるよりも、二人、あるいはそれ以上の知恵を出し合うことで、より高みを目指せる」というクリエイションの姿勢を表しています。
二人の才能が織りなすデザインの世界

D-dueを率いるのは、二人の類まれなるクリエイターです。
- Charo Frojan(チャロ・フロハン): 高品質なスカート工場を経営していた母の背中を見て育ち、イタリアでデザインを学んだ後、家業を継承しつつD-dueを立ち上げました。
- Alfredo Olmedo(アルフレド・オルメド): グラフィックデザイナー。チャロと出会ったことからファッションの世界へ。彼の描く独創的なイラストや「アイロニー(皮肉)」が、服に命を吹き込みます。
この「仕立てのプロ」と「グラフィックのプロ」がタッグを組むことで、D-due特有の「纏う(まとう)アート」が生まれるのです。
なんと、2人はD-dueでデザイナーの仕事をしながら、ポンテべドラにあるファッションの学校で教鞭をとっています。
「Collection」と「LAB」:二つのラインが描く物語
D-dueのコレクションは、芸術家や映像作品からインスピレーションを得て構築され、主に2つのラインで展開されています。
- D-due Collection(コレクション): コンセプト、仕立て、使用する生地のすべてにおいて、より洗練を極めたライン。大人の女性を美しく見せる高度なカッティングと、上質な素材感が特徴です。
- D-due LAB(ラボ): その名の通り、より「実験的」でカジュアルなライン。特筆すべきは、アルフレドが作成したオリジナルの絵本がベースになっている点です。絵本に登場するキャラクターや景色が、そのままイラストとして服に反映されます。
毎回、アルフレドが描き出すイラストは本当に魅力的で、物語をまとうようなワクワク感を届けてくれます。
リアンショのアトリエ:デザインと製作が「名前で呼び合う」距離
サンティアゴから南西に40km、リアンショ(Rianxo)という小さな町に彼らのアトリエがあります。
D-dueは、デザインから裁断、縫製まですべてをこの自社工場で行っています。
世界的な巨大ブランドの多くは、デザインと製造の拠点が遠く離れています。
「このパターンで、袖のないネイビーのドレスがいいね」と話が決まれば、1時間もしないうちにサンプルが上がってくる。
デザイナーであり仕立てのプロであるチャロが、職人とコンスタントにやり取りして服を作り上げていく。
40年以上勤めるベテランもいるこの場所は、会社というより一つの大きな「家族」です。
この親密な距離感が、大量生産には真似できない手の込んだ細部を支えています。
「日本のお客さんは好きじゃないよ!」海を越えた職人たちの愛
ここで、アルフレドが教えてくれた印象に残っているエピソードをご紹介します。
ある打ち合わせ中、一度も日本に行ったことがない工場のスタッフさんが、デザイン案を見て「これは日本のお客さんは好きじゃないよ!」と熱く意見を戦わせていたそうです。
ガリシアと日本は遠く離れていますが、職人さん一人ひとりの心には、常に日本のお客様の好みが刻まれています。
自分たちが作った服を大切に着てくれる日本のファンを、彼らもまた家族のように想っている。
そんな温かい絆が、D-dueの服には宿っています。
D-dueの服の良さはどんなところ?

体のラインを強調しすぎず、30代から60代以上まで、幅広い層がそれぞれの魅力で着こなせる包容力。それがD-dueの魅力です。
決して安くはありませんが、高品質な生地と職人の手仕事で作られる服は、彼らが暮らし、活動する「ガリシア」そのものを表現しています。服というより、アートに近いアイデンティティを感じるものです。
また、D-dueの服は「重ね着」で新たな表情が生まれます。
チャロが複数のワンピースやトップスをササッと重ねて着こなす姿は、本当にカッコよく、いつも見惚れてしまいます。
日本でD-dueに出会うには
現在、日本ではセレクトショップ「H.P.FRANCE(アシュペー・フランス)」を通じて、彼らのコレクションを手に取ることができます。
もしお店でD-dueの服を見かけたら、ぜひその刺繍の裏側や、生地の重みを感じてみてください。
そこには、ガリシアの村から海を越えて届けられた、温かな「家族の手仕事」の記憶が刻まれています。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。