スペイン国内の主要都市を結ぶ高速列車の中で、Renfe(レンフェ)のAVE(アベ)は「標準的な高速列車サービス」として位置づけられています。この記事では、AVEの路線、座席クラス、荷物ルール、チケットの種類、そしてAVLO(アブロ)との違いを、公式情報をもとに整理して解説します。
※内容は2025年11月末時点で公開されている公式情報をベースにしています。ご利用の前に必ずRenfe公式サイトで最新情報をご確認ください。
AVE(アベ)とは?スペインの高速列車サービスの概要
- Renfe(スペイン国鉄)が運行する商業列車サービスのひとつで、高速専用線を走る長距離列車です。
- スペイン国内の主要都市(マドリード、バルセロナ、セビリア、マラガ、バレンシア、アリカンテ、コルドバ、サラゴサなど)を結んでいます。
- 一部の列車はフランスとの国際区間(バルセロナ〜リヨン、マドリード〜マルセイユなど)も運行しています。
- 座席の種類は大きくEstándar(エスタンダール)とConfort(コンフォルト)に分かれ、チケット種別と組み合わせて選択します。
路線図や最新の運行区間は、Renfe公式サイトの「AVE・長距離 路線図」セクションからPDFで確認できます。
まず知りたい:AVEとAVLOの違いをシンプルに整理
同じRenfeが運行する高速列車として、低価格ブランドのAVLO(アブロ)との違いがよく質問されます。ここでは代表的なポイントだけを簡潔にまとめます。
| 項目 | AVE | AVLO |
|---|---|---|
| サービスの位置づけ | 標準〜上位サービス(座席タイプやチケット種別を選択可) | 低価格ブランド(基本サービスを絞ったシンプルな構成) |
| 座席タイプ | Estándar / Confort(XLシート) | 1種類のみ |
| 荷物ルール | 手荷物3個まで無料(合計25kg以内) | 小型手荷物+キャビンサイズスーツケースの2個まで無料(それ以上は有料オプション) |
| 車内サービス | 列車によってカフェテリアやワゴンサービスあり | ワゴンサービスなし(自動販売機のみの編成もあり) |
| 価格のしくみ | ダイナミックプライシング(時期・時間帯・需要によって変動) | 同様にダイナミックプライシング。プロモーション時に非常に低価格の設定が出ることもある |
価格はどちらも変動制で、ブラックフライデーなどのキャンペーン時にはAVLOで片道7ユーロ台、AVEで19ユーロ台からの特別運賃が設定されることもあります。一方で、通常期や混雑時間帯には、AVLOよりAVEの方が安い、またはほぼ同額になるケースもあります。
そのため、特定の日付・時間帯においてどちらが安いかは一概には言えません。実際の予約時には、同じ区間でAVEとAVLOを両方検索し、料金と条件を比較することが重要です。
AVEの路線と主な区間の例
AVEはスペイン国内の多くの高速区間をカバーしています。代表的な例を挙げると次の通りです。
- マドリード 〜 バルセロナ
- マドリード 〜 セビリア
- マドリード 〜 マラガ
- マドリード 〜 バレンシア / アリカンテ
- マドリード 〜 サラゴサ
- マドリード 〜 レオン など
ガリシア方面では、オウレンセやサンティアゴ・デ・コンポステーラへの長距離列車として、AVEと同じ高速線を走る長距離列車(Alviaなど)が運行されています。区間ごとの所要時間やダイヤは、Renfe公式サイトの時刻表で最新情報を確認してください。
座席タイプ:Estándar と Confort の違い
RENFEの案内によると、AVEや長距離列車の座席は大きくEstándar(スタンダード)とConfort(コンフォート)の2種類に分類されています。
Estándar(エスタンダール)
- 一般的な座席タイプで、多くの列車で標準設定されています。
- リクライニング機能付きのシートに、読書灯・電源コンセントが設置されています。
- 座席配列は車両形式によって異なりますが、2列+2列などの配置が採用されています。
Confort(コンフォルト)
- Estándarと比べて座席幅や足元スペースに余裕を持たせた「XLシート」として案内されています。
- 一部編成では2列+1列配置など、通路側のスペースを広く取ったレイアウトが採用されています。
- チケット種別の「Prémium」ではConfort座席が基本となり、「Elige」では追加料金を支払ってConfortを選択することができます。
車内設備:テーブル・フットレスト・電源・Wi-Fi
AVEの車内には、長距離移動に対応するための設備が整えられています。
- 各座席に折りたたみ式テーブルが用意されており、ノートPCや軽食を置けるスペースがあります。
- 多くの編成で足元にフットレストが設置されています。
- 座席付近に電源コンセント(またはUSBポート)が設けられており、充電しながらの移動が可能です。
- 車内Wi-Fiサービスが提供されている列車もあります(提供有無や品質は路線・編成によって異なります)。
AVEの荷物ルール(AVLOとの違いを含めて)
Renfeの公式規定によると、AVEを含む長距離列車では、次のような条件で手荷物を3個まで無料で持ち込むことができます。
- 手荷物3個まで(キャリーケース・旅行カバン・バックパックなど)
- 3個の合計重量は25kgまで
- 3個の合計サイズは、縦・横・高さを足した長さが290cm以内
- 各荷物の最大サイズの目安は 85×55×35cm(高さ×幅×奥行)
この条件内であれば、追加料金なしで持ち込めます。ベビーカーや車いすなど、身体・年齢に関連する補助具は、手荷物とは別枠で扱われる場合があります。
同じRenfeのAVLOでは、無料で持ち込める荷物が「小型手荷物+キャビンサイズ1個」の合計2個までに制限されており、それ以外は有料オプションとなります。そのため、スーツケースが複数ある旅行では、荷物ルールの面でAVEの方が条件に余裕があります。
チケット種別:Básico / Elige / Prémium の違い(概要)
AVEのチケットは、主に次の3種類に分類されています。ここでは共通するポイントだけを簡潔にまとめます。
Básico(バシコ)
- 最もシンプルで価格重視のオプションです。
- 座席タイプはEstándarで、変更や払戻しの条件は限定的です。
- 座席位置の細かい指定は、別途「座席指定オプション」を追加購入する場合があります。
Elige(エリヘ)
- 変更・払戻しの柔軟性が高いオプションです。
- Elige Estándar と Elige Confort に分かれ、追加料金を払ってConfort座席を選択することができます。
- 一定回数の変更が無料、または一部手数料のみで可能な条件が設定されています。
Prémium(プレミウム)
- Confort座席が基本となる上位オプションです。
- 変更・払戻しの条件が最も柔軟で、付帯サービス(ラウンジ利用や飲食サービスなど)が含まれる場合があります。
- 利用できる列車や路線は限定されることがあります。
各チケット種別に含まれるサービスや変更条件の詳細は、Renfe公式サイトの「Billetes AVE y Larga Distancia」の比較表で確認できます。
利用シーン別に見る:AVEを選ぶときに確認したいポイント
AVEとAVLOのどちらを選ぶかは、区間や価格だけでなく、次のような条件を基準に比較すると整理しやすくなります。
- 荷物の量:大きなスーツケースやバッグが3個程度ある場合
- 座席の種類:長距離区間の旅で、ゆったりした座席や静かな環境が必要なら、チケット種別と座席タイプを選びましょう。
- 変更・払戻しの可能性:予定変更の可能性がある場合は、EligeやPrémiumなど柔軟性の高いチケットを。
- 価格:同じ区間・日付・時間帯でも、AVLOとAVEのどちらが安いかは日によって変わります。総額(オプション料金を含む)で判断することが重要です。
乗車当日の基本的な流れ(AVE共通)
駅や列車によって細かな違いはありますが、AVEを利用する際のおおまかな流れは次の通りです。
- 出発駅に早めに到着し、電光掲示板で乗車列車の番号・行き先・発車時刻を確認する。
- ホームが表示されたら、指定されたホームへ向かう。
- 改札またはホーム入口で、紙のチケットもしくはQRコード付きのデジタルチケットを提示する。
- 一部の駅・列車では、乗車前に荷物検査(X線検査)が行われる場合がある。
- 乗車後、自分の座席番号を確認し、荷物棚または大型荷物スペースにスーツケースを収める。
マドリードのチャマルティン駅やアトーチャ駅では、改修工事や構内の拡張により動線が変わることがあります。最新の案内表示に従って移動し、時間に余裕を持って到着するのが安全です。
実走レポ|マドリード→ガリシア AVE Básico
ここからは、2025年11月にマドリード・チャマルティン駅からガリシア方面行きのAVE(Basico)に乗車したときの実体験を、これから利用する方のイメージが湧きやすいようにまとめました。
チャマルティン駅での流れ
- チャマルティン・カンポ・アモール駅の高速列車乗り場周辺は現在工事中で、仮設の動線になっています(工事終了予定は2026年3月頃というニュースもありますが延長する可能性もあり)。
- 旅行者が集中する時間帯だったので、出発の1時間強前に到着。地下鉄から高速列車エリアへ向かう際は、「Alta Velocidad」と書かれた青い矢印に従って歩くと迷いにくいです。
- 荷物検査の前にはすでに長い行列ができていました。マドリードから各地方都市へ向かう人が集まるため、スーツケースを持っていると進みが遅く感じます。
- 電光掲示板にAVEのホーム番号が表示されたのは、出発約20分前。表示と同時に多くの人が一斉に改札へ向かうので、日本のように整然とした列というより「我先に」という雰囲気です。
- 改札では職員にQRコードを見せて読み取ってもらい、その後300mほど歩いてホームへ。途中にスタッフが立っていて、ホームの方向を誘導してくれました。
- スペインでは日本のように車両の停止位置表示がありません。列車がホームに入ってから、自分の車両番号を確認して歩いていく流れです。
Basico座席に乗ってみた感想
- 利用したのは最もシンプルなBasico。座席クラスはEstándarです。
- リクライニングはAVLOと同じく、背もたれ固定・座面が前にスライドするタイプ。ただし、体感としてはAVLOより少しリクライニング幅が大きく、楽に感じました。
- 足元のスペースはAVLOとほぼ同じですが、フットレストの位置がAVLOよりも低くまで下りるので、足を乗せていても楽でした。
- 利用した車両はほぼ満席で、6人掛けテーブル席の真ん中に座ったため、立ち上がるときはやや窮屈に感じました。乗り降りが多そうな場合は通路側を指定できると安心です。
- 乗客層は家族連れ、旅行者、ビジネス利用とさまざま。友人グループの会話は聞こえるものの、うるさくて困るほどではありませんでした。
車内サービスと過ごし方
- 6号車にカフェテリアがあり、飲み物や軽食を購入できます。
- さらに、車両の一部には飲み物やスナック類の自動販売機も設置されていました。ワゴンサービスはなく、Confortなど上位クラスの車両には専任スタッフがサービスしていました。
- Wi-Fiはスマホ・PCともにスムーズに接続できましたが、サモーラ〜オウレンセ間のようにトンネルが続く区間では一時的に接続が切れることもありました。
- おおよそ3時間前後の移動でしたが、座席のクッション性とフットレストのおかげで、終点に着いたときの疲れは少なめでした。
AVLOと乗り比べて感じた違い
- 今回は荷物が少なめでしたが、「手荷物3個まで無料」というルールは、大きなスーツケースを持ち歩く旅行では安心感があります。実際に、大きなスーツケースを複数個乗せている乗客も見かけました。
- 座席のゆとり(幅・クッション)の点では、BasicoレベルであればAVLOと大きな違いはありません。ただし、Confort車両を見てみると、明らかに座席幅とクッションが厚く、快適さは一段上という印象でした。
- この日はAVEのBasicoの方がAVLOよりも安い運賃設定になっており、価格の面でもお得感がありました。
- 「とにかく安く」という場合はAVLOも有力候補ですが、荷物の多さ・座席のゆとり・当日の価格を総合的に見て、AVEの方が自分の旅に合っていれば、迷わずAVEを選ぶ価値があると感じました。
まとめ:AVEは「荷物と座席のゆとり」を重視する旅行に適した高速列車
- AVEは、Renfeが運行する高速列車の中で標準〜上位のサービスに位置づけられています。
- 座席タイプはEstándarとConfortがあり、チケット種別と組み合わせて選択します。
- 手荷物3個まで無料(合計25kgまで)という荷物ルールは、長期滞在や周遊旅行で複数のスーツケースを持ち運ぶ場合に便利です。
- AVLOとの価格差は日付や時間帯によって変動するため、実際の予約時には両方の列車を比較することが重要です。
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