スペインの名前文化には、日本とは異なる独特のルールと魅力があります。この記事では、スペイン人の名前と苗字の構造、人気の名前、伝統的な命名法などについてわかりやすく解説します。
スペイン人の名前の基本構造

スペインでは、一般的に人の名前は以下のように構成されます:
[名前] + [父方の姓] + [母方の姓]
たとえば、「Juan Carlos García Pérez」の場合:
- Juan Carlos:名前(複合名)
- García:父親の第一姓
- Pérez:母親の第一姓
このように、両親の姓を継ぐのがスペインの伝統的な命名方法です。
名前が1つだけの人もいれば、2つ以上の名前を持つ人もいます。
スペイン国王フェリペ6世の正式名はFelipe Juan Pablo Alfonso de Todos los Santos de Borbón y Grecia。
これはスペイン王室における伝統的な命名形式の一例で、複数の守護聖人の名前を含めるのが慣例です。
ヨーロッパで苗字を2つ戸籍簿に登録し、日常でも使用するのはスペインとポルトガルの2か国です。
苗字が2つある理由とその歴史
スペインで父方・母方両方の姓を子どもが持つようになったのは、貴族階級を中心に16世紀頃から見られるようになり、18世紀以降には一般層にも広がっていきました。
現在のような形式が法律で制度化されたのは19世紀末とされています。両家の家系を尊重する文化的背景がその根底にあります。
現在は法律により、子どもに与える姓の順序を両親が選ぶことも可能です。
母親の第一苗字を先に置いて戸籍簿に登録した場合、生まれる兄弟(姉妹)の苗字も自動的に【母親の第一苗字+父親の第一苗字】の順番で統一します。
de のつく苗字の意味と由来
「de」や「del」などの前置詞が付いた苗字(例:"De la Cruz", "Del Valle")は、地名や宗教、貴族的な由来を示す場合があります。
たとえば:
- De la Vega:草原(vega)出身の家系
- Del Mar:海(mar)に関係する地名由来
「どこから来たか」「どこにルーツがあるか」を表しており、13〜15世紀頃の人口増加によって苗字が必要になった際、地名が自然と使われるようになった背景があります。
以前、Deのついた苗字は上流階級の苗字と察することがあると教わりましたが、19世紀になると、「de」が省略される傾向が強まり、一部の家系が意図的に残したため、次第に上流階級の象徴として定着した背景があります。
ただし、「de」はドイツ語の“von”のように貴族称号を意味するものではありません。
また、結婚後に夫の姓を「de」で加える慣習(例:María González de López)は、ラテンアメリカで一般的ですが、現代スペインでは稀だそうです。
スペインの命名文化と伝統
スペインでは、次のような命名の習慣があります:
- 子どもに祖父母の名前をつけることが多い
- 宗教的な名前(María, Joséなど)が多用される
- 名前の日(santo)を祝う文化がある
複合名(例:Juan Carlos、María José)も一般的で、個性や敬意を込めて名づけられます。
聖人の名前を付けるのはキリスト教の古い伝統で、聖人に子供を守ってもらおうという考えからです。
祖父母や両親と同じ名前を付けるケースは、自分の友人や親族のケースから見ても実際に多いです。
でも、父親と息子が同じ名前って紛らわしいと思いませんか?
私の親族内でも、父親と長男が同じ名前のケースが4つ、おじいちゃんと孫が同じ名前も1つあります。
正直、彼らの話をしていてもそれが父親なのか、子供の方なのかと混乱することがあります。
日本ではちょっとありえないシチュエーションですが、スペインでは結構あるあるなネタです。
父親が『Juan(フアン)』なら、子供はJuanの愛称の『Juanito(フアニート)』で呼び分けたりとかもします。
現在も伝統に従い子供の名前を付ける人はいますが、時代とともに減少傾向にあります。
最新の人気名前ランキング(2025年版)
スペイン国立統計局(INE)が発表した2025年版の人気名前ランキングは以下のとおりです:
男の子の名前トップ3
- Hugo
- Mateo
- Martín
女の子の名前トップ3
- Lucía
- Sofía
- Martina
Lucía(ルシア)は2003年から、Hugo(ウーゴ)は2013年から人気なのですが、地方によって流行の名前に若干の違いもあります。
ガリシアで6年前に長男が生まれた頃、自分の周りでは男の子の名前でNUNO(ヌノ)、女の子ではNOA(ノア)という名前をよく聞きました。
スペインで最も多い伝統的な名前

スペインでは、時代を問わず長年にわたって使用され続けてきた伝統的な名前も数多くあります。
以下は、現在でも人口全体で最も多い名前の一部です。
男性に多い名前(伝統的)
- José(ホセ)
- Antonio(アントニオ)
- Manuel(マヌエル)
- Francisco(フランシスコ)
- Juan(フアン)
女性に多い名前(伝統的)
- María Carmen(マリア・カルメン)
- María(マリア)
- Carmen(カルメン)
- Josefa(ホセファ)
- Ana María(アナ・マリア)
これらの名前は、宗教や家族の伝統に深く根ざしており、祖父母世代から多く見られるものです。
珍しい名前やユニークな命名例
最近では、より個性的な名前や外国の影響を受けた名前も増えてきています。
例:
女性:Noa、Valentina
男性:Thiago、Gael
スペインの名前文化に興味を持った方は、あわせて現地での生活やスペイン語学習、留学事情についても知っておくと理解がさらに深まります。
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まとめ:スペインの名前文化の魅力
スペイン人の名前には、家族や土地、歴史が深く関わっています。その構造や命名の背景を知ることで、文化理解がより深まり、旅行や留学、交流にも役立ちます。
スペイン文化を体感できる現地ツアーやガイドもご案内できます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。