
オトラスペインさんは巡礼関係の仕事をされているようですが、詳しく教えてもらえませんか?
というお問い合わせを頂きましたが…
カミーノ専門の旅行会社に今年就職したばかりのペーペーです。
また、質問の内容から日本に帰って就職活動をする予定だと思いますので、
正直、記事にして回答するのを悩みましたが、サンティアゴで巡礼の1シーズンを経験して学んだ事や感じた事を書いてみる事にしました。
またあなたのイメージする巡礼関連の仕事に相当しそうなものもピックアップしてみました。
あくまでも私個人の意見ですので、どう吸収し、参考にされるかはご自身でお決めください。
もくじ
巡礼は観光?
巡礼(じゅんれい、英: pilgrimage)とは、 日常的な生活空間を一時的に離れて、宗教の聖地や聖域に参詣し、聖なるものにより接近しようとする宗教的行動のこと
(引用)Wikipedia
と合わせて、世界観光機関(OMT)のツーリズムの定義も読んで見て下さい。
ツーリズムとは、継続して1年を超えない範囲で、レジャーやビジネスあるいはその他の目的で、日常の生活圏の外に旅行したり、また滞在したりする人々の活動を指し、訪問地で報酬を得る活動を行うことと関連しない諸活動と定義される。
カミーノの歴史や宗教的な側面を否定したり、軽視しているわけでは全くありませんが…
巡礼者が日常の生活圏外に移動し、巡礼しながら道沿いの村々に滞在する行動自体は、OMTが定義するツーリズムと変わりありません。
カミーノに特化した旅行会社=旅行業と分かりやすいですが、
- 巡礼者が自分の住んでいる場所から巡礼出発地点まで利用する飛行機やバス
- 巡礼路で利用するアルベルゲ、その他の宿泊施設
- 巡礼中に利用するバル・レストラン
- 巡礼路の行程内で利用する荷物移送サービス
- 各地で買うお土産を提供するお店
など、観光業は幅広い業種にわたります。
私が特に観光をこちらで勉強したのもあると思いますが、観光業にご興味はありますか?
巡礼のプロモーションは?

カミーノが通る自治州によって管轄や事情が異なるので、ガリシア州のケースを少し説明すると…
- 公営アルベルゲの運営
- 巡礼路のパトロール
- 展示会などを通した巡礼路のプロモーション
- スペイン・世界各国の友の会との連絡窓口
などを担当するシャコベオという会社があります。
会社と言いましたが、株の大部分を所有するのはガリシア州政府です。
日本の企業のように毎年人員を募集しているわけではありませんし、
社員レベルで新規に雇われた人はここ何年もいないのではないかと思います。
観光局等が行うプロモーションの通訳などに携わるにしても、単発的な仕事になるのではないでしょうか。
オスピタレロの仕事
あなたが想像する仕事のひとつに、アルベルゲで巡礼者のお世話をするオスピタレロがあるかもしれません。
私はオスピタレロの経験がありませんので、間違っているかもしれませんが…
オスピタレロはボランティアだと理解しています。
ただ、何年か前に、フランス人の道が通るオスピタル・デ・オルビゴで
南米からスペインに移住し、村で私営アルベルゲを運営している男性に会いました。
オスピタレロの仕事でも
- 巡礼者が増える夏の期間だけ、特定のアルベルゲでボランティアをする
- 公営アルベルゲの募集に申し込んで、契約の期間と内容に同意して働く
- 私営アルベルゲでボランティア(?)かスタッフとして働く
- 私営アルベルゲを経営する
と、働き方が違ってくるのではないでしょうか。
繰り返しますが、詳しくないので経験者の方やカミーノ友の会等にコンタクトされた方がいいと思います。
カミーノ専門の旅行会社の仕事は?
会社によってタスクの順番・やり方は異なりますが…
- お客様の希望に沿った(巡礼時期・期間・巡礼方法・巡礼ルート・宿泊施設のタイプ等)巡礼計画と見積書の作成
- 予約を受けて、宿泊施設やその他のサービスの予約手配業
- 巡礼中に何らかのトラブルで電話をしてくるお客様へのサポート
- サンティアゴに到着したお客様をサポートするサービスの提供
- クレーム対応
などがありますし…
巡礼路を歩いていてグループを引率するガイドさんも見かけた事があるかと思います。
ちなみに、私はサンティアゴのオフィスで…
- シャワーや荷物の一時預かりの対応
- 自転車や荷物の配送手続き
- レンタル自転車の受け取り
- 空港までのトランスファーの手配
- サイトの日本語訳
- 日本の旅行会社とツアー作りのやりとり
や、オフィスに入ってくる方に観光情報の提供もします。
正直、専門性の高い仕事内容ではありません。
しかし、色んなタイプの巡礼者とそのニーズを知るにはとてもいい環境にいたと思ってます。
例えば、仕事を始める前に『シャワーの需要なんてあるの?』って生意気に思ったのですが…
- サンティアゴに一泊もせずにその日の列車・バス・飛行機に乗って帰るスペイン人巡礼者
- 汗をいっぱい書いてサンティアゴに到着し、すぐにシャワーを浴びたい自転車巡礼者
- 雨の日に到着し、巡礼者のミサの前にシャワーを浴びたい巡礼者
から高い需要があり、喜ばれているサービスです。
仕事をして、今年は自分の想像になかった巡礼者の求めているものについて学んだので、もう少し書いてみますね。
巡礼者が求めるサービスは実に様々
今年、カミーノをしたある友人が公営アルベルゲに泊まった時、

みたいな発言をしたフランス人男性がいたそうです。
どう意見しようがいいですが、公営アルベルゲは到着順にベッドを支給し、徒歩巡礼者を優先するので、
自転車や馬、ペット同伴の巡礼者にとっては…
- 夜に自転車の盗難の心配をせずに保管スペースがある
- 馬小屋がある宿
- ペット同伴での宿泊OK
といった私営アルベルゲでないと難しい状況があります。
安いアルベルゲがあっても、巡礼の各行程でホテルやパラドールを好んで利用する人もいて、
彼らにはそれを選ぶ理由があるわけです。
巡礼と各地のグルメやワインを贅沢に楽しみたい人のツアーもあるので、巡礼の楽しみ方も人それぞれです。
特に、私にとって興味深かったのが自転車巡礼に関するサービスなのですが、
サンティアゴから自宅への自転車配送という個別サービスをとっても、
1台3,000€は軽くする高級マウンテンバイクや電動自転車を持参する
ベルギーのオランダ語圏とオランダから来る巡礼者向けに特別運送サービスを提供する会社もあります。
書ききれませんが、巡礼者の横顔や求めるサービスは本当に幅広いなと感じました。
私が思いつく巡礼関連の仕事を書いてきましたが、次の点を知っていることも大事かもしれません。
巡礼のシーズンっていつからいつまで?
巡礼者は1年通してサンティアゴへやってきますが…
聖週間(セマナ・サンタ)から10月までの約7カ月が『巡礼のシーズン』と言えます。
ただ、これはサンティアゴの場合であり、巡礼路の各ルートの場所によって違いはあるかもしれません。
10年前のガリシア州公営アルベルゲの宿泊データを見ると、ピーク期は6~9月の4カ月に大きく集中しているので、
その頃に比べると、シーズンが伸びていると言えますが…
仕事を通じて知り合った他の業者さんたちと話をすると、
11月に店を閉めて、バケーションに入ってまず休んで来年に備える人が多いですし、
11月に店を閉めてから次のシーズンまで店舗の賃貸料を払うので、巡礼の期間に実質1年分の生活費を稼いでいる人
もいて、観光業で働く人の現実もちょっと知ることができました。
もし、ここまで書いてきた内容にあなたが興味を持って巡礼者のサポートをしてみたいと思うなら、
巡礼特化の旅行会社の仕事は面白いかもしれませんが…
自分がイメージすと私が紹介した内容との間に距離感を感じたか自分で考えて見るといいかもしれません。
旅行会社で働く時に必要な知識は?
巡礼の経験や巡礼に関する知識はもちろん必要になりますが、実際に仕事をして改めて思ったのは
色んな国から来る人の対応をするので、英語はもちろん、他の言語も数か国語を知っているのが理想的です。
フランス人からフランス語だけで話をされて困りましたし、イタリア語やポルトガル語がもう少し分かれば…
と何度も思いました。
韓国人巡礼者が多いので、日本語+韓国語が出来ると、巡礼路のガイドの仕事をする時に強いと思います。
さいごに
正直、質問を頂いた時は『こっちで巡礼関係の仕事を見つけるよりまずは日本で就職活動でして職務経験を積んでから海外に出た方がいいじゃないか』と思いました。
ただ、2年後には11年ぶりの聖年が待っていて、2年後を視野に入れて動いている人が沢山います。
このタイミングで現地で巡礼の仕事に関わるのは、ある意味貴重な体験だとも思います。
しかし、スペインで仕事を見つけるのは決して簡単ではありません。
- ワーキングホリデーの制度を利用して、スペインに滞在し巡礼関連の仕事を体験する
- 観光に興味があるなら修士号を勉強し、インターンで自分が興味のある機関での仕事経験を積む
なんていうのも、ひとつの方法かなと思います。
あなたの期待する答えになっていないかもしれませんが、参考になる情報がひとつでもあれば幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。