スペインガリシア地方で山火事が起きる構造的な問題・原因とは?

2017年10月15日(日)に起きた山火事について、10月に入ってからも続く高温で乾燥した気候と強風、そして放火の可能性といった原因が伝えられています。

 

乾燥した空気や強風は確かに被害が大きくなった要因だと思います。今回のような大規模な火災は普通ではもちろんないですが、ガリシアで山火事が起こるのは今年だけの話ではありません。

 

スペインガリシア地方で山火事が起こる構造的な問題や原因について知りたいと思い、調べた結果を自分なりにまとめてみました。

 

よろしければ最後までお読みください。

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農村から都市部へ人口が集中する1950~1960年以前のガリシアでは、州全体に人口が均等に住んでいて、自分たちが日々生活するために必要な野菜や小麦を栽培する畑や家畜を放牧する土地など山間部でも土地が最大限に利用されていました。
今では想像しずらいですが、100年ほど前のガリシアでは上記の理由で森がなかった時代があったという専門家もいます。

 

人が都市へ移動すると、農村部に住む人がいなくなり放置される土地ができますが、持て余した土地を使ってお金を短期間で稼げる魅力的な木が現れます。

 

それは、紙の原料となるユーカリや松の木です。

 

ガリシアにおけるユーカリの木の簡単な歴史

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18世紀にオーストラリアからヨーロッパにもたらされたユーカリの木。

 

ガリシアやスペインにこの木が入ってきた正確な年数について議論されいまだに特定できないにようですが、最近の研究で1850年頃にコルーニャのSanta Marta de Ortigueiraでユーカリの木が初めて植樹されたことがわかっています。

 

スペイン内戦後の1940年代にスペインの各地にユーカリの木が植樹され、当時フランコ体制は北スペインが将来のセルロース産業の原料供給の場所として重要な場所になると考えていたそうです。

1968年ユーカリの木からセルロースを製造する会社(Empresa Nacional de Celulosa)がポンテべドラに設立されます。

ユーカリの木は成長が早く、短期的にお金になりますが成長期に大量の水分を消費しすること、周辺の地元にある昔からの植物の生長を妨げたり、植物生態系を破壊するので環境面などからして問題がある木であることも確かです。

1992年に40年後の2032年までの山間部の土地の長期的計画では2032年に245,000㏊とされていましたが、すでに288,000㏊と当初の予定を上回っています。

(北スペインのユーカリの木の分布図)
出典: http://www.galiciaconfidencial.com

ユーカリの木は燃えやすいというのは嘘!?

 

ユーカリの木は燃えやすい、火事が広まる原因としてもユーカリの木は問題視されています。

 

ガリシアと同様にユーカリの木が広く植樹されているポルトガルでは、2030年までユーカリの木を新たに植樹することを禁止すると決めました。

 

ビーゴの林業エンジニア学校の先生であるJuan Picos氏のインタビュー記事で、ユーカリは火事から自分を守ることができ火事の後も他の植物よりも生き残る力があるが、ユーカリは他の木よりも燃えやすいというのは必ずしも正しくないと答えています。

 

5~10年前にユーカリが植えられて放置されたまま土地では、木の周りに低木の茂みが育ち他の植物も密集しているので火がつくと非常に早く広範囲に回りやすいは確かだが、ユーカリの種類や数量、植樹された土地がどう管理されているかという構造的なところを把握することが大事だと説明しています。

 

ユーカリの木がある土地をどう管理するかが重要

外来樹であるユーカリはガリシアの森林の景観を壊し、環境への悪影響から全部伐採するべきだという意見もありますが、ユーカリが関係する製紙関係のビジネスはガリシアの経済のPIBの12%を占めています。

 

Juan Picos氏は、ユーカリを植える時に個人が好き放題に植えるのではなく、問題を防いでベネフィットを最大限に生かせるようにユーカリの木を整理して植樹し管理することが大事だと言っています。

 

異論がある人もいるかもしれませんが、林業についての知識がない私はそういう考え方があるんだと思い、Picos氏のインタビュー記事を興味深く読みました。
どちらにしても、山火事の一番の問題は放置されたままの土地の存在だと言います。

 

ガリシアに放置されたままの土地はどのくらいあるの?

ガリシアの多くの市町村で、きちんとした都市計画がないまま個人の家や工場がカオス状態で建てられている状況があります。

 

放置された森の中に家を建てた住民や工場が山火事があった時に真っ先に危険な状態にあいます。

 

自分の土地をきちんと管理しない所有者の責任は?と思いますが、ガリシアでは所有者がわからない土地が沢山あるという現実がまた問題を複雑にしています。

 

ガリシアで道路を建設した時に、所有者が異なる2メートルほどの小さい区画があったり、用地買収をするにも全体の約20%の土地の所有者が名乗り出ないなどの理由で結局分からないままという例があるそうです。

 

2007年に火災予防法が可決されたものの、持ち主がわからない放置された土地が多いこと、現在そういった土地のメンテナンスは市町村が行うにしても、必要な費用や人材が全ての市町村で十分に対応できないところがあります。

 

山を焼くのは全て環境テロリストなの?

(2016年8月ポルトガル北部のホテルから見た山火事の様子)

 

ガリシア・ビエルソ・アストゥリアスの西側、そしてポルトガルの北部を含むイベリア半島の北西の端っこは、気候的に木や植物がよく成長し、夏に乾燥する地域です。

 

この二つの特徴をもつ地域はヨーロッパでもイベリア半島北部だけだそうです。

 

昔からこの地域の山に住む人々は、機械が無い時代に生える木や雑草などをコントロールする手段は山を焼くことでした。

 

焼くことで土地を「掃除」したり、猪を脅かして追い出すなどの理由がありました。

 

ガリシアでは1年に山を焼くための許可申請が60万件あるそうです。(許可申請の数であり、火を付ける数ではありません。)

 

目的は放火とはかけ離れたものでも結果として山火事を起こすケースがあり、過去の新聞記事からもニュースが残っているそうです。

 

今回の火事を組織的な環境テロリストの仕業と、今のところそういったものを証明するものは発見されていません。(情報元: eldiario.es

 

山の掃除のためだったら森に火を付けていいと決して私は言っているのではありません。

 

歴史的にそういう背景があるが、放置された土地が多い現在では火災を起こす目的がなくても昔よりも火を付けることはとても危険なのではないかと考えました。

 

今後も大きな山火事が起こる可能性は?

グリーンピースは2006年にガリシアでは5~6年おきに大きな山火事が起きていると警告していますし、お隣のポルトガルの例を見ても今後また大規模な山火事は起こる可能性を否定することは難しいでしょう。

 

ガリシアの歴史・気候・山や土地利用の構造的な問題を知ると、沢山の要因が働いているのに強風や放火犯のせいにするのは単なる責任逃れのような気さえしてしまいます。

 

州政府がこの問題に対して動いていないわけではありませんが、一部の報道を鵜呑みにするのも危険ではないかと思います。

 

農村部の過疎化や住民の高齢化により土地の管理問題はますます難しくなるでしょう。

 

山火事が起きた時に近くの住民をはじめ、個人レベルでどういう対応をしなくてはいけないのかという教育の必要性を訴える専門家の意見が印象に残りました。

 

さいごに

私や家族に直接の被害はありませんでしたが、サンティアゴでも当日の朝から煙っぽく、空気は非常に乾燥していました。

 

今回死者の出たNigran(ニグラン)に住む友人やVigo(ビーゴ)に住む親族を心配したり、これまで見たことのない火事の映像を見て怖いと感じました。

 

ガリシアを車で走りながら近くの山から上がる煙や火事の焼け跡を見るたびに主人と山火事が起こる原因について話をしていましたが、今回の事件をきっかけにもう少しきちんと理解したいと色々調べてみました。

 

構造的な問題は思っていたよりも複雑で大きいので、ここ数日の情報収集では足りない部分もあります。一部説明が十分に伝わらないところがあればここでお詫びします。

 

自分の勉強メモとして書いた面が強い記事ですが、ここまで読んで頂いた方はありがとうございます。

 

スペイン語やガリシア語になりますが、自分で読んで理解したいと思った方は私が今回参考にした情報元の一部を紹介しますのでよかったらどうぞ。^^

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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